理学部 生物科学科
高橋 一男 教授
Takahashi Kazuo

研究分野 生態学、進化生物学、遺伝学

出身地/神奈川県茅ヶ崎市
生年/1978年
尊敬する人/両親、恩師の先生方
趣味/ジャグリング、多言語学習
好きな映画/『Into the Wild』(邦題『イントゥ・ザ・ワイルド』)
好きな食べ物/鳥皮

理学部 生物科学科 高橋 一男 教授

科学のレンズを通して覗く
生き物の世界の魅力。

小さな昆虫に潜む無限の不思議

ショウジョウバエのような小さな昆虫を主な研究材料として、生態学や進化生物学に関する研究に取り組んでいます。

森の中を歩いていると、こういう花にはこういう虫が寄ってくるんだとか、こういう土壌にはこういう木が生えるんだとか、研究者ではなくても五感を使って自然の法則性を理解できると感じることがあると思います。そのように自然を感じながら生活するということを人間は昔からやってきたわけですが、五感だけでは感じられないことももちろんありますよね。私が興味を持っているのは、人間が直接、目で見たり手で触れたりしても感じることができない生物的現象を、科学技術や統計学を用いて認識し、そのメカニズムを解き明かすことです。例えば、微小昆虫の翅(はね)は、薄膜干渉による鮮やかな構造色を発色しますが、その反射光には人間の目には見えない波長の光も含まれています。そこで、ハイパースペクトルカメラを活用することで、その光を定量化し、得られたデータの統計解析を行いながら研究を進めていきます。結果として、ただ単に「煌びやかで美しいな」と感じていた昆虫の翅の色が種間でどのように異なるのか、どのような遺伝子がその発色に関わっているのかなどを解明できるようになります。人間の五感を科学技術で拡張することで、生物的現象の謎に接近する。そうしたことに研究の魅力を感じています。

研究の過程では「その研究成果を社会にどう活用できるのか」ということを考える必要が少なからずあるわけですが、理学のよいところは「真理を追究すること自体に価値がある」という側面があることだと思います。応用先について考える視点はもちろん大事ですが、それよりもまず自分の興味を手がかりに、真理を突き詰めることができる学問なのです。研究のゴールを社会や他の人に委ねるのではなく、自分で決定することができる。だからこそ、高いモチベーションを持って取り組むことができています。

生態系の法則を導き出す、マクロな生物学分野

生態学や進化生物学に関する授業を担当しています。生態学に関する授業では、自然界で生物が引き起こす相互作用(競争、共生、寄生など)がどのように生じているのか解説し、自然生態系に働く法則を学んでもらいます。自然に興味がある学生さんたちに、自然の複雑性や特異性を理解してもらえればと思っています。

進化生物学に関する授業は、そうした生態学の理解の上に、過去から未来に向かう時間軸を被せるようなイメージです。生物がどのような相互作用のもとで進化してきたのかを考えます。

こうした学問は生物学の中でもマクロな分野に位置します。一方では、細胞分子生物学などのミクロな生物学分野があります。この違いについて別のもので例えると、スマートフォンという電子機器がどのようなパーツによって動いているのか〈至近要因〉を探るのがミクロな生物学、スマートフォンがユーザーのどのような選択に応答して進化してきたのか〈究極要因〉を探るのがマクロな生物学です。個別具体的な現象を取り扱う細胞分子生物学などと比べると、生態学や進化生物学はより抽象的な法則を学ぶ学問と言えるでしょう。身近な生態系と、見たこともない遠い場所の生態系に何か共通した自然現象の法則があるのではないか。それを理解したいというところに学問的な興味があり、突き詰めていく面白さがあります。

生物学への興味・関心を卒業後も育ててほしい

私の授業では履修生の興味を育てることを心がけています。抽象的な内容も多いので具体例を出して説明することや、わかる人とわからない人の差が出ないように丁寧に知識の隙間を埋めていくことを特に重要視しています。研究者にならない限り、理学部で学んだことが仕事につながるケースはあまりないかもしれません。しかし、学問を学ぶ楽しみは一生のものです。大学で学んだ内容をベースに、卒業後も知識をアップデートし続けて、学問を理解し、楽しめるような人になってもらいたいと思っています。

ジャグリング
大学生のころにサークルでジャグリングを始めました。今でも5つボールのジャグリング練習を日課にしています。足腰の鍛錬のために、フットバッグも練習しています

餌をビンに分注するための道具
ショウジョウバエの餌をビンに分注するための道具です。正確な分注には繊細な操作が必要で、20年以上使っている今でも時々失敗します