分子が集まり「超分子」になると、可能性が広がる
私の専門は「超分子」です。2つ以上の分子がくっつき新たな機能を発揮するものを「超分子」と呼びます。分子にはさまざまな種類や性質があり、同じ種類や性質同士で集まることも、違う種類や性質同士で集まることもあります。超分子になるとできることが増え、一つの分子では不可能だったことも可能になります。例えば、私たちの生体内における細胞膜やDNAの二重らせん構造、複合タンパク質はその典型です。つまり、私たちの生体内をはじめ、自然界は超分子だらけなのです。
私が特に専門としているのは「シクロデキストリン」といい、大学時代に初めて触れた分子でした。消臭剤「ファブリーズ」やわさびのチューブ、サプリメントなど、身近なものに使われています。シクロデキストリンは底のないバケツのような形をしていて、中央に空洞が存在します。表面は水に溶けやすいのですが、空洞部分は水を嫌うという二面性を持った分子です。ユニークなシクロデキストリンをほかの分子と組み合わせるとどんな反応が起こるのか、一つずつ組み合わせを試し、日々シミュレーションを繰り返しています。思い描いた結果が出るまで1年かかるということも珍しくありませんし、自分が考えた通りになるという保証もありません。それでも研究を続けているのは、「予想通りの化合物ができた!」という喜びが忘れられないからだと思います。
人は考える生き物。自分の頭で考えながら取り組んで
「物質生命機能デザインU」の授業では、まずブレインストーミングとマインドマップを用いてグループワークを行います。後半は、過去の卒業研究のテーマを参考に、化学研究の問題点やその解決方法の発見について話し合い、グループごとに発表を行ってもらいます。実験の授業を通じて実験スキルを習得してもらうことはもちろんですが、あわせて実験の操作一つひとつの意味を考えてもらうように心がけています。ただ言われたことをそのまま行うのでは、ロボットと同じです。「この操作はなぜ必要なのか」「この操作を行うことで何が起こると予測できるか」といった問いをよく投げかけるのですが、自分の頭で考えるクセをつけてほしいからです。今の時代、インターネットで検索すればすぐに正しい答えが出てくるかもしれません。しかし、物事に「なぜ?」と疑問を持ち、その答えを探そうと頭をひねって考えることは、研究者としても、一社会人としても必要な力だと思います。人は考えることで成長する生き物です。自分の頭で考えながら研究に取り組んでほしいです。
人が一人でできることなど、本当に限られたことです。今の研究者としての私があるのは、さまざまな人との縁がつながった結果だと思っています。人と人とがつながることで成果に結びつく、社会とはそういうものではないでしょうか。ですから、大学での授業を通じて、周りを巻き込む力をつけてください。自分のアイデアに人を巻き込み、力を貸してもらえるような大きな人を目指してください。
失敗を恐れず、どんどん外へ出よう
私は学生時代にスポーツジムでアルバイトをし、部活でも社会人の先輩とよく顔を合わせていました。いろいろな年代の人と広く接することで、コミュニケーション能力が磨かれたと思います。勉強も部活もアルバイトも、無駄な経験は一つもありません。興味を持ったことにはどんどん首を突っ込んで、経験を重ねてください。
大学の4年間は、長いようであっという間です。私は4年生の時に研究室に配属され、研究に打ち込むようになりました。もちろん研究にかけた時間は無駄ではありませんでしたが、英語に苦労している今、もっと早く学生時代から海外へ行っておけばよかったと痛感しています。若さは強みです。失敗してもすぐに取り返すことができます。恐れずにどんどん外へ出て行ってください。何か躊躇しているのであれば、一歩だけでも踏み出してみましょう。失敗はマイナスにはなりません。あなたの将来にとって、必ずプラスになります。
2020年9月にいただいたシクロデキストリン学会奨励賞の盾です。大学4年生の時から続けてきたシクロデキストリンの研究が評価され、授与していただきました。この賞は恩師も受賞されたことがあるので、同じ賞をいただくことができ、とても感慨深いです
aikoのライブTシャツです。ライブに行くたびにTシャツとマフラータオルを必ず購入するので、どんどん増えていきます(笑)。高校生の頃からaikoファンとなり、Tシャツは10枚ほどになりました。大切に着ています