国際日本学部 日本文化学科
水川 敬章 准教授
Mizukawa Hirofumi

研究分野 日本近現代文学、日本近現代文化

子供の頃の夢/覚えていません
尊敬する人/大勢います
愛読書/『ポップヒットメイカー データブック』
趣味/(あえて言えば)音楽鑑賞、おいしいものを食べる・飲む
休日の過ごし方/ボーッとする
好きな音楽/いろいろあります
好きなTV番組/ローカル番組
好きな映画/(浪人生の時に観た)オリヴィエ・アサイヤス『イルマ・ヴェップ』
好きな著名人/大勢います
好きな食べ物/いろいろあります

国際日本学部 日本文化学科 水川 敬章 准教授

社会の中で作品を捉える。
作品の「面白い」「楽しい」を味わいながら学ぼう。

小説、映画、アニメ……複数のジャンルをつなげて考える

1960年代以降の日本の文学や文化、特に小説・映画・アニメ・ポピュラー音楽などの表現を研究しています。文学や文化の研究の醍醐味は、ジャンルを横断して時代や社会も巻き込んで考えることにあります。少し前の出来事を例にとりましょう。2007年、集英社文庫では、太宰治の代表作『人間失格』の表紙がリニューアルされ、人気漫画家の小畑健さんが表紙のイラストを手がけました。小畑さんは、自身の大ヒット作『DEATH NOTE』の主人公「夜神月」のテイストに近い、「大庭葉蔵」(『人間失格』の中心人物)とおぼしきキャラクターを表紙に描きました。これに反応した人々の中には、大庭葉蔵に夜神月のイメージを重ね合わせた読者も少なからずいたはずです。というのも、この新しい表紙になってすぐ、本書は爆発的に売り上げを伸ばし、一種の社会現象と言えるほどの反響を得たからです。ここから、この表紙以前と以後では『人間失格』に対する読者のイメージや理解・解釈が違うのではないか、という仮説が立てられます。これを探究する場合、まず小説表現の精緻な分析、次に表紙の分析を行います。しかし、これだけではダメです。加えて『DEATH NOTE』の内容とその読まれ方の分析、さらには2007年以前と以後の『人間失格』の読まれ方がわかる資料なども検討して、この仮説に迫ります。

この例が示すのは、作品は時代や社会や文化のあり方と密接に関係しているということです。作品の表現の「精読」をもとにして、複数の観点や異なる表現ジャンルを接続させ、当時の社会との関係も視野に収めながら作品を分析することで、今まで気づきもしなかった「作品の別の姿」や「表現の豊かさ」が明らかになります。これは研究であると同時に、今まで以上に作品を面白く感じたり、深く楽しんだりすることでもあると思います。作品は、時代や社会の変化にともなって異なった解釈やイメージが与えられるのですから、実に興味深いですね。

価値観の違いを受け入れると、「自由」が手に入る

授業では、みなさんにとって身近な小説・映画・アニメ・音楽などをとりあげ、それらの要素を日常生活や社会に置き直して検討することがあります。たとえば、「キャラクター(キャラ)」の意味を尋ねると、多くの人は「アニメや小説など虚構世界の登場人物のこと」と答えるでしょう。しかし、キャラクターは、虚構の物語世界の対極にある「現実世界」にも存在しています。友人や芸能人に対して「キャラをつくっている」と言ったり、学校生活やSNSなどで「キャラをつくるのに疲れた」と感じたりしたことはありませんか。これらは、アイドルやSNSに投稿する自分の姿などは「物語世界のキャラクターと同様に創作されている」と言っているのと同じです。こう考えれば、現実世界と虚構世界の関係を単純に区別して捉えられなくなります。このように、今までの自分の考え方・物の見方とは違う立場から、柔軟に世界や社会を捉え直すことは、大学での学びに不可欠です。

授業を通して身につけてもらいたいのは、「寛容さ」です。「寛容」とは、自分と異なる考え方・価値観を認めることです。「あなたはこんな人だよね」と決めつけられるのは誰でも嫌なものでしょう。なぜなら人は多面的な存在ですから。しかし、そのくせ、つい決めつけてしまいたくなるのも人間です。このことから自由になるために作品を分析していると言ってもよいくらいです。これまでの価値観で「この作品は面白い/つまらない」と決めつけるのではなく、みなさんには、作品分析を通じて「こんな一面もあったのか」と驚き、新たな世界を発見してもらいたいのです。このようにして、自分以外の理解の仕方を受け入れることができるようになると、「どうして分かってくれないのだろう」などと人に対してもイライラすることが少なくなるかもしれませんよ。その時、みなさんは自由を手に入れているのではないでしょうか。

誰かと過ごす喜びは、孤独を知ってこそ感じられるもの

友人をつくることはもちろん大切ですが、無理して群れないことはそれ以上に大切かもしれません。ひとりで町歩きをすると色々な発見があります。誰かと会話している時には見えなかった景色が見えてきます。それもまた世界の広がりのひとつです。また、ある種の孤独を知っているからこそ、人と一緒にいる喜びも感じられることもあるでしょう。

それから、難しい本や、好みではない作品にも向かい合ってみることも重要です。それはいつかあなたの財産になります。今までとは違う「面白い」「カッコいい」「美しい」……そういう心が動く瞬間をたくさん経験して、興味関心の幅を広げてください。

ライブのツアーパンフレット
ライブのツアーパンフレットです。大学生になってよくライブを鑑賞するようになりました。私にとってパンフレットは大切な宝物であり、貴重な資料でもあります

図書館のイベントチラシ
愛知県豊橋市の図書館のイベントで、文学と音楽を楽しむ会の企画に携わり、登壇もしました。小説の解説、ジャズのライブ、高校生の朗読劇、ラジオ・パーソナリティの朗読をミックスしたユニークな会になり、多くの方々に楽しんでいただきました