国際日本学部 歴史民俗学科
久留島 典子 教授
Kurushima Noriko

研究分野 日本史

出身地/神奈川県川崎市
生年/1955年
家族/夫・息子
子供の頃の夢/教師・研究者

国際日本学部 歴史民俗学科 久留島 典子 教授

中世に残された文書から武士や百姓の生活を描き出す。

主な研究対象は室町・戦国時代の歴史的文書

中世の日本社会で、武士や百姓たちはどのような暮らしをしていたと思いますか? この時代、京都で久世荘(くぜのしょう)という荘園を支配していた東寺のお坊さんは、村の有力者からさまざまな報告が上がってくると、会議を開いて荘園の方針を決めていました。このときの議事録に、武士や百姓の生き生きとした生活の様子が残されています。「今年は日照りで飢饉になりそうだから、年貢をまけてほしい」といった内容や、応仁の乱の際には「西軍の武士がやってきて村のお米を奪われた、どう対応すればいいか」といったものなどがあり、数百年もの間に渡って記録されました。

私の研究対象は、中世の中でもこうした文書が比較的多く残されている室町・戦国時代です。特に久世荘や、現在の島根西部で力を持っていた武家の益田氏に関する史料は大変よく残っているため、長年研究対象として扱ってきました。支配される側だった武士や百姓たちの生活、そして中世から近世・江戸時代へ移行していった社会の変化の過程を明らかにすることが研究目的です。

歴史学の特徴は、史料をもとに解釈を行い、その解釈にもきちんと根拠を示すことにあります。ですから、根拠となる当時の文書を見つけ出し、史料としての価値を見出す作業がとても重要。自身の想像を広げて人々の生活を描き出す文学との違いはここにあります。

神奈川大学で、民俗学的な視点を取り入れた研究を

中学生の頃から、さまざまな人物の人生の物語を知ることができる歴史の授業が好きでした。そして、歴史を深く学ぶために入った大学で、1年生のときに出合ったのが歴史学者の石母田正氏による『中世的世界の形成』という本です。とても難しい本でしたが、先生やゼミ生と読み進める中で、「研究者が調査を行うことで初めて、歴史上の人々の人生が描き出されているのだ」と実感しました。想像力ではなく、確かな史料に基づいて描き出されてく過程をとても興味深く感じたのです。その後は大学院へ進学。以降、100年以上史料集をつくり続けている東京大学史料編纂所の所員として就職し、長年史料研究に携わりました。

歴史学と非常に縁の深い民俗学において、優れた研究を行う「日本常民文化研究所」を併設する神奈川大学に所属するようになったのはとてもうれしいことです。私が研究対象とする「支配される側」の人々の生活を、当時の文書だけでなく日常の道具なども用いて明らかにしようとする民俗学的な要素を、今後の研究に加えていきたいと思っています。

歴史を学びながら、相対的に物事を捉える力を養ってほしい

学生には、物事をさまざまな側面から見ることができる人になってほしいと思います。歴史を遡ると、本当にさまざまな事件や変化が起きていて、現在の社会現象もひとつの側面だけでは捉えることができないと気づくでしょう。私は国際日本学部で日本史を教えているわけですが、日本史の学びもあくまでひとつの側面です。学生の皆さんには、他の地域の歴史はどうであったのかなど、学部で学んださまざまな要素を総合して考える力を養っていただきたいです。そして、その知識や考えをどう将来に活かすかを考えてほしいと思います。

そのためにも、在学中は自分が生きてきた地域とは異なる場所や世界を訪れ、観光地に限らずさまざまな土地を巡ってみてください。私は40歳になって初めて海外に行きましたが、言葉や文化も異なる場所で、日本を相対化して見ることができた経験はとても貴重なものでした。海外に行くことができないときは、いろいろな本を読んでみるのがいいでしょう。本の世界に入っていくことは、初めての土地に行くこととある面で似た体験だと思うからです。自分が興味あると思った書物の世界に深く入り、新しい世界に足を踏み入れる擬似体験をしてほしいと思います。

益田家文書
これまで仕事以外にほとんど時間がなかったためか、まったくの無趣味な人間です。強いて言えば、前職で20年間編纂に携わった益田家文書という文書群がゆかりのものに挙げられるでしょうか。原文書はもちろん、編纂の結果としての『大日本古文書 益田家文書』が思い入れの深いものです

クレマチス
自宅で草花を育てているなかのひとつ、クレマチスです