実務経験で得たさまざまな気づきをテーマに
私の父が大工だったので、物心がついた頃から自然と建築に興味を持っていました。ものづくりも好きでしたが、それよりも図面を描くのが好きで設計に携わりたい思い、その目標がぶれることなく今日に至ります。設計には、主にデザインに携わる「意匠設計」、建物の耐震安全性などを検討する「構造設計」、快適な室内環境を創造する「設備設計」があり、私は「構造設計」を専門にしています。
現在では建築技術の高度化・複雑化もあり、専門分野ごとに設計業務を分業することが一般的です。自分の専門分野の設計手法を学び、それらを応用して課題の解決にあたることは実務者としての第一歩になります。大学院修了後のおよそ10年間、設計事務所に勤務し、さまざまな課題に取り組めたことが今の私の基礎となっています。
一方で基礎を固めていくと、「この分野の技術が不足している」、「あと少し改善を加えると使い勝手がもっとよくなるのに」など、さまざまなことに気づけるようになります。特に既存の建物の改修では、最適な補強を採用したいのだけれど、建物の機能性を考えると最適な補強が採用できない場合や、設備的に追加の開口を設けたいのだけれど、耐震安全性の観点からそれができないことなど、あちらを立てるとこちらが立たないといった事がたびたび起こります。そのような実務で直面した「課題」、「気づき」を突き詰め、解決手法を検討していきたいと思う気持ちが日増しに強くなり、研究の道に戻ってきました。
したがって、今の私は既存の建物(主にRC造(鉄筋コンクリート造))の改修手法に関する研究をしています。高度経済成長期に建設された建物は、建て替えや改修の時期に差し掛かっており、長寿命化改修など建物の継続的な利用を目的とした改修工事が増えつつあります。それらの改修工事では建物の耐震性だけでなく、機能性や美観、環境、寿命などへの配慮が求められることもあるので、幅広い要望に対応可能な改修手法や、その確立に必要となる基礎的な研究までを対象にしています。
「これだけは自信がある!」と言える強みを持とう
学生時代に「これだけは自信がある!」と言える強みをぜひ作ってください。
私は大学で陸上競技に没頭し、合間をぬって勉強とバイトをする生活を送っていました。今振り返れば、もっと勉強しておけばよかった、もっと友達と遊んでおけばよかったなど、思うことも多々あります。
それでも一つのことに打ち込む生活はとても充実していましたし、何よりも陸上競技で培った体力や精神面のタフさは私にとっての「これだけは自信がある」ものとなり、その後の生活をいくらかは楽にしてくれたと感じています。私の場合はスポーツでしたが、語学や趣味などなんでもよいので、「これならば自信がある」ということを一つは見つけて、とことん突き詰めていって欲しいです。
その一方で、一つのことだけに没頭しすぎると視野が狭くなってしまうので、さまざまなものに興味を持ってほしいとも思います。学生生活を通じて自分の強みを持ちながら、興味のアンテナも広い、幅広い視野を持てる人になってください。
携帯電話はガラケー派で、この端末も9年くらい愛用しています。最近、ようやくスマートフォンも買いましたが、ガラケーのほうが何かとシンプルで気に入っています
「一級建築士免許証明書」と「構造設計一級建築士証」。たまに見返すことで、名前負けしないように頑張ろうという気持ちが湧いてきます