理学部 総合理学プログラム
箸本 春樹 教授
Hashimoto Haruki

研究分野 植物形態学、細胞生物学

出身地/石川県金沢市
尊敬する人/ダーウィン
趣味/音楽鑑賞
好きな映画/「かくも長き不在」「アフリカの女王」
好きな音楽/モーツァルトの音楽
好きなTV番組/「大相撲中継」「笑点」

理学部 生物科学科 箸本 春樹 教授

ある生物が別の生物と合体することで進化していく
「細胞内共生」説に魅了され、研究を続けています。

植物の誕生を解明する「細胞内共生」説

葉緑体という細胞小器官をもつ植物が、光合成を行って成長していくことは、おそらく皆さんも小中学校の理科の授業で勉強したと思いますが、私は主に、この葉緑体について研究を続けています。

植物の進化をさかのぼると、まだ植物が植物ではなかった頃、植物の祖先にあたる生物が、光合成を行う「シアノバクテリア」という細菌を自らに“取り込む”ことで、葉緑体ができたと考えられています。つまり、ある生物が、独立した別の生物だったシアノバクテリアを自らの中に取り込み、葉緑体という細胞の一部にしたことで、植物が誕生したと考えられているわけです。“取り込む”とは、自分の細胞の中に“共生”させることであり、これを「細胞内共生」と呼んでいます。

ただ、別の生物を取り込んで自分の細胞の一部にしたところで、分裂の仕組みがもとの生物のままでは、共生体をコントロールすることができません。「細胞内共生」で最も着目すべきは、シアノバクテリアの分裂の仕組みをそのまま受け継ぐのではなく、新たに植物の葉緑体としての分裂の仕組みをつくり、そのうえで自らの細胞小器官として進化させた点です。

研究の醍醐味は“人類の知識をひとつ増やす”こと

私は大学入学直後に読んだ、ロシアの学者オパーリンによる『生命の起源』という本に刺激されて生物学に興味を抱き、2年間の教養課程を経て理学部に進学しました。そして3年生の時に、授業で前述の「細胞内共生」を知りました。ある生物が他の生物と合体することで進化していくというこの説が、それまで学んできた生物の進化とはまるで違うことに驚き、大変興味をもちました。

「細胞内共生」説は、19世紀の終わり頃から幾人かの学者に唱えられてはいたものの、当時はまるで相手にされなかったようです。1960年代に入ってからこの説を支持する証拠が集まり始め,アメリカの生物学者マーギュリスによって1970年頃に明確な形で細胞内共生説が提唱され、これ以降、いろいろな角度から研究を進める多くの学者が現れました。

大学院進学後,特に博士課程から本格的にこの研究に取り組みました。そして現在に至るまで、光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いて、さまざまな植物の葉緑体の分裂の仕組みを考察する研究を続けています。研究の醍醐味は、それまで未知だったことが解明されることであり、少し大げさに言うならば、自らの手で“人類の知識をひとつ増やす”ことなのかもしれません。

目標や夢に向かって計画的に学んでほしい

「植物系統分類学」の講義では、こういった植物の起源と系統に関する内容を中心に、色素体の起源、藻類と陸上植物の起源と系統、進化などを取り扱います。講義はできる限り丁寧に行い、学生の理解の助けになるように、毎回講義内容をプリントして配布します。それらは復習にも役立つでしょう。

皆さんには、大学の4年間をただ漫然と過ごすのではなく、目標や夢を描いて、それに向かって計画的に勉学に励んでほしいと願います。目標や夢を描くには、まずは意識的にアンテナを広げ、いろいろなものを見たり聞いたり、観察したりすることです。そのためには、多くの人に出会って話を聞いたり、本を読むことも大事でしょう。湘南ひらつかキャンパスの図書館はさまざまな分野の資料が揃い、大変充実しているので、ぜひ活用してください。そして、そうするうちに自ずと興味の対象が見えてくるはずです。興味の対象が見つかれば、その分野の研究室に入ったり、その分野を専門とする教員に学んだりしながら探求することができます。そして卒業の際に、理学部で学んでよかったと思えるように、また、将来どんな職業についても、大学で学んだことを活かせるような4年間を過ごしてほしいと思います。

大学院で葉緑体の研究を始めるため、大学院入学時に購入した1967年刊行の専門書『The Plastids』
大学院で葉緑体の研究を始めるため、大学院入学時に購入した1967年刊行の専門書『The Plastids』。表紙は、まだ顕微鏡での写真撮影がかなわなかった19世紀末の細胞生物学者たちがスケッチしたさまざまな植物の葉緑体をモチーフにデザインされています

愛用しているマグカップは、神奈川大学に着任して初めての卒研生が、誕生日に贈ってくれたものです
愛用しているマグカップは、神奈川大学に着任して初めての卒研生が、誕生日に贈ってくれたものです