理学部 化学科
鈴木 健太郎 准教授
Suzuki Kentaro

研究分野 有機物理化学

生年/1974年
出身地/愛媛県松山市
血液型/B型
家族構成/妻・息子
子供の頃の夢/宇宙飛行士・小説家
尊敬する人/すべての道の先人たち
趣味/読書・散歩
休日の過ごし方/家族と遊ぶ
好きな食べ物/麺類
好きな国/行ったことのない国

理学部 化学科 鈴木 健太郎 准教授

科学の前提は「謎を解き明かす」という純粋な興味。
役に立てられるかどうか気にする前に、興味を大切にしよう。

理学部生は社会に出たらレア人材

担当講義の「サイエンスコミュニケーション」はオムニバスの授業です。私は15回中2回を担当しており、科学者から見た社会の中での科学者あるいは科学の役割について講義しています。ひとことで言えば「理学部生」であるということを考えてみようという内容です。

文科省の統計によれば、全大学生の中の「理学部生」の占める割合は3%ほどだそうです。30人に1人というと、クラスに1人の感覚です。そう考えてみると、理学部生というのはかなりのレア人材ですね。卒業後の就職先にもよりますが、行った先で「科学を一番知っている人」になる可能性が高いのです。知識以前の肌感覚として、理学部生はサイエンスの現場に一番詳しいわけですから、在学時には苦手意識があったとしても、「自分は専門家なんだ」という意識をもって欲しいと思います。たとえば職場で「 "ニホニウム"ってなに?」なんていう話題になったとき、そこに少し色がつけられるようなポジションに立てます。科学に関する問題について知識や経験が生かせるチャンスが少しでもあれば、そこで遠慮せず意見を述べていく。そういう自信を持ってもらえることを目指して授業をしています。

予想外の「化学反応」を期待するのが基礎科学の本質

私の研究テーマは、分子集合体のサイエンスです。分子が集まってできた集合体の中で、ミクロな分子同士がやりとりしながら、最終的に大きな変化を作り出す仕組みについて、ミクロとマクロの両方の視点から研究しています。

最近取り組んでいるのは、小さな油粒に光を当てて自由に動かす実験です。油滴の原料として光があたると石鹸の材料のような物質になる化合物を使うことによって、光が当たった側だけ表面張力が下がり、油滴の表面に表面張力の高低差を作り出す。その違いが周りの水をひっぱり、光の方に油滴自身を動かすのです。

この動きは狙って作ったものではなく、別の実験の過程でたまたまできたもの。実験を続けていると、想像もしなかったような現象に行き当たることが、化学の世界ではあるのです。アイドルの世界などでも「グループを作ってみたら化学反応を起こして面白い形になった」などと言うことがありますよね。それが本当の「化学反応」でできたら面白いなと思っています。

本来、基礎科学の本質はそういうところにあると思います。僕らは誰かが決めた目的に向かって研究しているのではなく、まだ誰も知らない分子の可能性を知りたいと思って研究しています。「役に立てよう」を目的にしてしまうと、科学はとたんに息苦しいものになってしまいます。学生の皆さんには、科学が本質的に持っている純粋な興味を大切にして欲しいと思います。

「わからない」と言えることが大切

私は一時期、国立の研究所や東大で研究をしていたのですが、そこにいる学生たちは、わからないことがあると、それが馬鹿な質問かもしれないなどと考えずに、堂々と「わからない」と聞くことができるのが印象的でした。厳しい受験を乗り越えた経験からなのか、彼らは自分にものすごく自信を持っています。そのせいか「わからないこと」に対して素直なんですね。けれども本来、誰もがそうであるべきだと私は思います。誰にでも萎縮せずに「わかりません」と言ってほしい。人には人ごとに理解の仕方があるので、こちらが良いと思った説明でも、その人には合わなかっただけかもしれない。それどころか、本人さえも気づいていない新しいアイディアの芽が秘められているかもしれないのです。これは「役に立てよう」を目的にしないこととも繋がるかもしれません。まずは「わからない」に対して素直に、純粋な興味を持つこと。その先に、科学(化学)の進歩はあるはずです。

研究だけに限らず、人生の中で出会うことのすべてにおいて、将来的に何が役に立つのかは誰にもわかりません。だからひとつのテーマや物事にとらわれず、いろいろなことを試して欲しい。まだ失敗が許される若いうちに、たくさんの人に出会って話して、様々な価値観が存在することを経験して欲しいと思います。

私自身も、神奈川大学へ赴任してくる前、2年ほど京都にある美術系の出版社で編集者として働いていました。以前から、研究の現場でしか出会えない「綺麗なもの」を紹介する写真集が作れたらいいな、と思っていたのです。化学の実験をしていると、失敗して割れてしまった結晶や、目的の化合物ができる過程で生まれた副生成物の中に、はっとするような美しい物にいくつも出会います。科学的には価値はないものなので、それらは決して表に出ないのですが、立場が変わればそれに価値を見つける人がきっといる。たまたま知りあった出版社の社長とそんな話をする機会があり、そこでご縁ができて働くことになったのです。結局、その企画は形にならなかったのですが、いつか実現できればいいなと思っています。

手筒花火と祐金町の法被
博士研究員として愛知県岡崎の研究所に勤めていた頃、地元のお祭りであげた手筒花火とそのときに着た祐金町の法被。火の粉が降ってくるのではっぴには穴があくが、それを塞がないのが粋

「詳説 物理」
高校時代の物理の教科書「詳説 物理」(三省堂)。専門的すぎず、エッセンスが良くまとまっているので、最初の取っ掛かりとして今でもよく使うからボロボロです