理学部 生物科学科
丸田 恵美子 教授
Maruta Emiko

研究分野 植物生態学、植物生理生態学、樹木水分生理学

出身地/神奈川県
趣味/山歩き

理学部 生物科学科 丸田 恵美子 教授

豊かな自然に囲まれた平塚キャンパス。
積極的に自然の中に入って、自然を知ろう。

地球と生命の歴史をたどり、植物がどう進化をしていったかを知る

私が担当している講義は「植物系統分類学」です。「系統分類学」は、進化も含めて生物がどのように変化し、種として分かれていったのかということを調べる学問です。海の中に光合成を行うプランクトンが現れたのが約27億年前。光合成によって酸素が生まれ、それが紫外線を遮ることで地上に生物が上陸できるようになっていきました。植物の祖先である藻類も、そうやって地上にあがっていったのです。授業では、このように地球と生命の歴史を概観し、特に植物と菌類が共生して陸上にあがった過程について理解していきます。

とはいえ、なじみのない植物ばかりが出てきても興味が持ちにくいでしょうから、まずは植物の最も進化した形である被子植物について、学内にどんな花があるかなど身の回りの植物を観察することから、歴史をさかのぼって、進化の過程をたどっていきます。

実は私自身、「生態学」が専門です。生物の変化を学ぶ分類学に対して、生物同士、あるいは生物と環境との関わりについて考えるのが生態学です。ですから分類学は専門ではありませんが、専門家が教えると専門的になりすぎてしまうので、逆にいいかなと思っています。

富士山や丹沢で深刻化しているシカの食害について調査中

最近、私が主な研究テーマにしているのは「富士山、丹沢山域のシカ個体数の増加に伴う植生劣化について」です。富士山や丹沢周辺では近年、自然の植生を研究する際にその影響を無視できないほど、シカの食害が激しくなっています。

丹沢でシカが目立つようになってきたのが20〜30年くらい前のことになります。そこで植物を食べつくしてしまったので、最近は富士山に移動してきたのです。富士山で被害が出始めたのはここ10年くらいですが、1〜2合目は下草がほとんどなくなってしまっていて、5合目付近ではモミの木の樹皮が食べられてしまっています。樹皮を幹の一周全て食べてしまうと木は枯れてしまうので、それがどれくらい食べられてしまっているかなど、食害状況を調査しています。

シカは1km²あたり5頭の生息数だったら被害が出ないといわれていて、うまくいけば共存は可能です。ただ現状では20〜30頭、多いところでは50頭くらいに増えてしまっているので、植物が食べ尽くされてしまうんですね。シカがこれほど増加した原因ははっきりしないのですが、可能性が高いとされている仮説はこうです。まずは戦後の焼け跡に植林をした際、若い苗はシカの好物だったため、その時期にシカがかなり増えたことと、自然保護の思想が広まって狩猟が禁止されるようになり、あまり獲られなくなったこと。それらの理由が重なって数が増えたといわれています。そのため農林業に被害が出始めたので、シカ柵を作るようになった結果、シカたちが原生林に逃げ込んで20〜30年前から原生林に被害が出始めたのです。このように生態系というのは、さまざまな要因が絡みあって成り立っています。こうした生物同士や環境とのつながりを調べていくのが、まさに生態学なのです。

「これなんだろう?」と不思議に思うことを大切に

研究室には、富士山で害虫の研究をしたいという学生もいれば、学内の植物を調べている学生もいます。また北アルプスのホシガラスの生態を調べるため、夏休みには餌になるハイマツの種がどれくらいあるか調べに行こうという人もいます。研究テーマは自由。それぞれが自分の興味のあることに取り組んでいます。

生態学には、自然が好きな人はもちろんですが、知識はなくても「これなんだろう?」と不思議に思うことを調べていく、好奇心旺盛な人にも向いていますね。

本学の平塚キャンパスは、豊かな自然に囲まれています。授業を受け身に聞くだけでなく、積極的に、この自然の中に入って自然を知ってほしいと思います。そうはいっても学生の皆さんは、なかなか校内の植物をじっくり見たり、歩いたりはしないでしょう。そこで授業では植物観察をしながらキャンパス内を歩くツアーなども行っています。ただ、キャンパス内にはまだ植物の種類が少ないので、昆虫なども少ない。もっと多様性を増やしていかないと、生態系としては豊かになっていかないんですね。先日もアザミが咲いたんですが、綺麗に管理するために刈られてしまいました。このように、環境を荒れないように管理することと、多様性を維持することの両立はなかなか難しい問題です。

ちなみにキャンパスの近くには滝があって、そこは地元の企業が社員に環境教育をする場所としてビオトープなども造られています。また学校周辺ではNPOの方々が行う里山プロジェクトなども実施されているので、そういうところに学生も加わって活動するなど、地元とも連携しながらやっていければと思っています。

学生が実験中の竹
学生が実験中の竹。色水につけ、水がどのように上がっていくかを調べている。竹はキャンパス内の竹林から採ってきたもの

樹高ポール
木の高さを測る「樹高ポール」。森林の研究者には必需品。造園や林業の仕事でも使われる。実習では学生に人気があるが、全長12メートルにまで伸ばすとバランスよく保つのが大変で、支えると肩が凝ってしまう