理学部 生物科学科
金沢 謙一 教授
Kanazawa Kenichi

研究分野 進化生物学、機能形態学、行動生態学、古生物学

出身地/東京、神奈川
血液型/A型
趣味/アコーディオン、バドミントン
愛読書/宮本輝、夏目漱石
好きな映画/チャップリン作品、60年代までの映画
好きな音楽/フォーク、クラッシック

理学部 生物科学科 金沢謙一教授

生物の形や行動には意味がある、
その適応進化の歴史を明らかにします。

生態を探るには化石や祖先の考察から

現在、この世に生きるさまざまな生物がもつ、生理・形態・生態学的な多様性は、生物が長い時間をかけて地球のあらゆる環境に適応するようになった結果です。現況下での適応だけでなく、これまでの適応進化の歴史に注目することで、その生物の本質を知ることができます。生物というのは突然この世に出現するものではありません。必ず祖先のいる歴史的な産物ですから、時間軸を入れて考察する必要があります。すなわち、祖先から脈々と続く歴史の中で、それぞれの生物の特徴がどのように変化してきたのかを知り、その上で現在の環境との相互作用を明らかにすることが大切なのです。

適応進化が明らかになって、どんな意味があるの? と問われれば、それは知的好奇心を満足させ、人の教養を豊かにするもの、と答えられるでしょう。現代の生物学では、いわゆる「ライフサイエンス」と呼ばれる分野にあるように、すぐに何かの役に立つとかお金儲けにつながるような実学が流行していますが、もっと根源的な自然の仕組みを解き明かす、いわば自然に挑んで行く分野もあるのです。大学が本来、文化教養を学び高める場所であることを考えると、まさしく大学における学問ではないかと考えています。実際、この分野は会社や専門学校で学ぶことはできず、また、経済中心の発展途上国の大学にはまず存在しません。

生物科学科で化石を扱える幸せ

生物の歴史を探る上で化石は重要です。本来ならば地学分野で研究される化石を自由に扱える生物科学科は、おそらくここが日本で唯一ではないでしょうか。また、この学科には生態系、遺伝子、細胞などの生物学の基本分野が揃っているので、生物学の総合である進化の研究する上でよい環境だと思います。

研究室では、自分が好きな生物に関して、その行動や生態に迫ることができます。具体的にはウニ、カメ、ザリガニ、フナムシ、ヤドカリ、カニ、トカゲ、貝類など、各々が自分の興味がある生物をテーマに、進化を基盤にして、それぞれの行動や形の意味を探っています。「フナムシが好きなので研究したい!」という女子学生が、とてもいい研究をしたこともありました。扱う生物がマイナーなこともあり、学生の研究でも、世界で初めての発見などもしばしばあります。ただ残念なのは、論文をまとめれば世界ですぐに認められるのに、英語で論文を書けないからという理由で埋もれている研究が多いこと。ですから、これから生物を目指す学生の皆さんには、ぜひ、英語も身につけてほしいと思います。

ライフワークは西太平洋のウニ類の研究をまとめること

私自身の研究では、ウニ類の適応進化を明らかにすることが主たるテーマです。ウニ類の中でも「ブンブク目」というさまざまな殻の形をもつグループが、私が学生の時からずっと取り組んできた相手です。ブンブクを知るためには、まず飼ってみることからでした。海にスキューバで潜って探し、一年半を費やしてやっとのことで確保しました。そして実際に生きているブンブクの動きを観察する一方、あらゆるブンブクの文献を読み、世界の博物館に収蔵されたブンブクを観察。さらに今から約1億4千万年前の白亜紀の始めに、砂に潜るように適応してきたグループなので、貴重な過去がとどめられている化石の考察もすすめました。地層中の化石の埋まり方や堆積物などからも、暮らしぶりを探ります。結果、ブンブクの殻の形と移動様式、殻の形のもつ適応的意義を明らかにすることができたのです。

今後は、西太平洋のウニ類についての研究をまとめるのがライフワークです。20世紀から21世紀にかけて大発展した生物学の知見の上に、ロシアからオーストラリアに至る西太平洋諸国の研究者と協力して、化石から現生種まで、分類と生態を中心にDNA解析も含めて、ウニ類をまとめた本。それができれば、多分これから先、300年くらいは使われるものになるでしょう。生きているうちにそれを完成させることが、現在の目標です。

『ウニ学』本川達雄編著
『ウニ学』本川達雄編著。第16章カシパンとブンブクの生物学、第18章ウニの進化史を執筆

自らが採取したウニの一種
自らが採取したウニの一種。ウルトラブンブク