法務研究科(法科大学院) 法務専攻
中村 俊規 教授
Nakamura Toshiki

研究分野 民事実務

生年/1958年
血液型/A型
出身地/京都市
趣味/読書(ジャンルを問わず、本なら何でも読みますが、最近はSFが中心です)、写真(作品を鑑賞するだけでなく、何かを自分で生み出したいと思って大学時代に始めましたが、今は時間がなくてなかなかカメラを手にすることができません)
子供の頃の夢/うーん、何を考えていたんでしょうね。何も考えていなかったかもしれません
尊敬する人/頑張っている人
愛読書/『すべての美しい馬』(コーマック・マッカーシー)、『早春スケッチブック』(山田太一)など
好きな映画/「ブレードランナー」、「タクシードライバー」、「時計じかけのオレンジ」など
休日の過ごし方/仕事をしています

法務研究科(法科大学院)法務専攻 中村俊規 教授

世の中に、絶対的に正しい考え方などありません。
1つの答えが出ても、なお考え続ける“タフな思考力”を身に付けてください。

より良い答えを求めて、タフな思考を続けてほしい

法曹(裁判官・検察官・弁護士)と呼ばれる人たちは、どのような仕事をしているのでしょうか? テレビドラマで描かれるようなイメージを持っている人が多いと思いますが、実際に法曹がどのような規範の下で、どのようなことを考え、どのような仕事をしているのか理解している人は、少ないかもしれません。それは法曹を目指して法科大学院に通う学生も同様です。私が担当している授業のひとつ「法曹倫理」では、まず法曹という存在についてのイメージを掴み、その理解を深めてもらうということを目的としています。例えば、学生と一緒に裁判を傍聴し、その後で裁判官との座談会を設け、直接、裁判官から話を伺ったりしています。また、そもそも法曹がどういう規範の下で仕事をしているかを理解してもらうことも重視しています。

先日は、授業でこういう問題を学生に投げかけました。「あなたが刑事事件の弁護人だったとします。被告人は、殺人の罪で裁判にかけられていますが、ずっと無実を訴えてきました。実際、検察官が出してくる証拠では、十分な証明とは言えず、争えば無罪がとれる状況です。ところが、いよいよ裁判が終わりに近づいて来た段階で、被告人があなたにだけ『実は、殺人を犯しました』と打ち明けました。しかも、裁判ではこのまま無実を訴えたいと言っています。あなたは、被告人の告白が本当かどうかを裏付けるために調べてみたところ、どうやら本当だと確信に至ったとします。では次の裁判で、弁護人であるあなたは、どういう態度をとったら良いのでしょうか?」。弁護人には守秘義務がありますから、被告人が話した内容を裁判所や検察官に話すことはできません。かといって実際に罪を犯しているのに、被告人の望むように無罪として仕事を進めて良いのかどうか。そういうことを学生に考えてもらい、自分の意見とその根拠を示してもらうことをします。

こういうことには、いくつも答えが出てきますが、恐らく絶対的な正解はありません。その場に置かれた弁護人が、いくつもの規範の下で、それぞれ一生懸命考えて、これが正しいと思う行動をとるしかないのです。だからこそ学生には、とにかく考え続けてもらいたい。法曹になれば、常に自分の頭で、何をすれば良いのか、逆に何をしてはいけないのかを考えて生きていかなければなりません。そのためにも「考え続ける」タフな思考力を身に付けてもらいたいのです。

「ぶれない」ことより、考えを変えられる力を

昨今は、よく「ぶれない」ことが重要だという物言いがされています。また「ぶれない」とは考えを変えないという意味で使われることが少なくないように思います。ところで、考えを変えないことは、本当に良いことなのでしょうか? 考えて出した答えが、“絶対”とは限りません。世の中には、絶対的に正しい考え方などないのです。確かに、その場その場で都合良く考え方を変えるというのは良くないと思いますが、もしかすると、もう一日考えれば、さらに良い考えが浮かぶかもしれませんよね。ですから出した答えに囚われる必要はなく、さらに思考を続け、きちんとした理由があれば積極的に考えを変えていくべきではないかと思います。

例えば、最高裁判所の判例は、変えられないと思いがちですが、実はこれまでに最高裁の判例が覆ったことは何度もあります。それは「その判例はおかしいから、変えるべきだ!」と行動し、チャレンジした弁護士がたくさんいたからです。「最高裁が決めたことだから、どうしようもない」と思うのではなく、常に考え方は変化するかもしれないと思って、取り組んでいくことが重要です。そうでなければ、救われるかもしれない人を救うことができなくなってしまいます。とは言え、考え続けるということは、ものすごく辛いことです。人は誰しも、ひとつの考え方や立場に立っている方が楽ですからね。大変なことだとは思いますが、しかし実際に法曹とは粘り強い思考力を求められる仕事です。学生には、そこのところを理解してもらえるように願っています。

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