法務研究科(法科大学院) 法務専攻
安達 和志 教授
Adachi Kazushi

研究分野 行政法、教育法

生年/1952年
出身地/仙台市
趣味/読書(エラリー・クイーン、アガサ・クリスティなどの推理小説のほか、歴史小説など)、音楽鑑賞(ジャンルを問わず)
子供の頃の夢/考古学者
尊敬する人/謙虚で、言葉遣いの美しい人
愛読書/池波正太郎『真田太平記』
好きな映画/「スティング」(ポール・ニューマンとロバート・レッドフォード主演)
好きな音楽/大瀧詠一の作品
好きな食べ物/魚介類、ドイツ風の穀物パン、(食べ物ではないが)ドイツのフランケンワイン
好きな国/ドイツ(東西冷戦の象徴であったベルリンの壁崩壊の前年、日本の元号が昭和から平成に変わる年に、ボンで1年間の留学生活を送りました)
休日の過ごし方/DVDの鑑賞(「名探偵ポワロ」「刑事コロンボ」「三国志」など)

法務研究科(法科大学院)法務専攻 安達 和志 教授

法律を学ぶことは、社会を学ぶこと。
社会の理想と現実のギャップを知ることが、法律を学ぶ醍醐味です。

行政法は、行政活動に対するブレーキとアクセル

主に行政法を専門として研究しています。行政法とは、行政が活動するためのルールで、例えれば車のブレーキとアクセルのようなものだと言えます。行政の行き過ぎを抑えるブレーキの役割と、逆に行政に介入してほしい場合に、その活動を促すアクセルの役割を担う法律です。これまでの行政法は、何かとブレーキをかける方が多かったのですが、ここ数年は固有の生命・健康や生活の安全を守るといった部分でアクセルを働かせる方に移行してきています。私は、そのアクセルの踏み加減をどうするかという部分を主に研究しています。

具体的にお話しすると、行政法の中でも特に注目している研究テーマに、環境行政訴訟があります。例えば、広島県福山市の「鞆(とも)の浦景観訴訟」。景勝地である鞆の浦を埋め立てて架橋するという計画に地元住民が反対し、裁判を起こしたという例があります。また東京都国立市の「国立マンション訴訟」では、高層マンション建設によって国立の景観が損なわれるということで、反対住民が裁判を起こしました。こうした環境問題に対する訴訟は、今や全国各地で起きていますが、実はこれまで環境問題で裁判を起こすことは、とても難しかったのです。しかし、2004年に行政事件訴訟法という法律が大幅に改正されたことを機に、ようやく裁判を起こすことができるようになり、裁判所は門前払いせずに、訴状の中身を審査してくれるようになってきています。

法解釈問題の背景にある思想や考え方が変われば、法律も変わる

とはいえ環境行政訴訟は、裁判所という入口を越えただけで、今なお、難しい状況にあります。環境を顧みない、道路やダムなどの大規模開発は、依然として進められていますし、それに反対して市民や団体が訴訟を起こしても、裁判による救済を受けることは困難です。なぜなら日本の行政法では、環境は公共の利益であって、個人の利益とは関係ないという考え方が根強くあるからです。私は、環境行政訴訟で問われている人々の生活環境上の利益とは、個人と公共の間にある“集団利益”だと考えています。一人ひとりの小さな利益が集まった“集団利益”を守るという考え方を、社会に広く浸透させることができれば、法の解釈やその背景にある考え方が変わり、日本の行政法を変えられるかもしれません。そういう発想のもと、市民が裁判制度を利用しやすくする方法を追究したり、道路や高層マンションなどの建設決定前に、意見を聞いてもらう住民の権利について考え続けています。

このように法律家は、ただ六法をめくって暗記しているわけではなく、人々が快適に生きていくにはどうすれば良いかという観点から、法律や制度の問題を見直す方法を考える役割を持っています。私自身、常に法解釈問題の背後にある考え方や思想を変えるという問題意識を持って研究に取り組んできました。

法曹を目指す法科大学院生は、まずは司法試験に合格するための知識・能力や受験技術を身に付けることが第一ですが、できればそれだけに終始せず、法解釈問題の背景にあるものについても、十分学んでほしいと思っています。

社会問題に関心を持ち、何が大切かを考えることが法律の入門

法曹を志す学生を取り巻く状況は、率直に言ってとても厳しいです。合格率は年々低下し、法科大学院での成績評価も厳格化しています。そんな中で折れずに勉学に励むには、自身がどんな法曹になりたいのか、何のために法曹になりたいのかを明確にすることです。倒産を経験した中小企業の人が身近にいたことから、中小企業の法律相談に乗れる弁護士を目指すというように、具体的な原体験があればモチベーションも高くなります。また、そうした原体験がない人も、法科大学院には司法試験科目以外の授業がたくさん用意されているので、それらを学ぶことで疑似体験をし、モチベーションにつなげてほしいですね。

一方、法学部の学生や、法律は難しそうと考えている入学前の皆さんには、法律の入門書ではなく、社会問題を取り上げたノンフィクションを読むことをおすすめします。公害問題やゴミ処理問題など、社会問題に関心を持ち、何が大切かを考えることが法律の入門だからです。その問題の中で法律がどういう役割を果たしているのか、逆に何が障壁となっているのかに気づくという経験を、本を通じて積んでみてはいかがでしょうか。法律を学ぶことは、社会を学ぶことにつながっています。法律を通して、社会の実像や本来あるべき姿、その理想と現実のギャップを知ることが、法律を学ぶ醍醐味です。

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