法学部 法律学科
井上 匡子 教授
Inoue Masako

研究分野 法思想史・法哲学。具体的には、アダム・スミスの法思想・社会思想を中心に18世紀スコットランド啓蒙哲学における法学の位置づけ、現代的なフェミニズム理論・市民社会論研究

生年/1959年
血液型/A型
家族構成/同居しているのは、義母・息子、夫は単身赴任中
好きな映画/「評決」、「炎のランナー」
好きな音楽/ポリフォニーの合唱曲、オペラ、器楽曲も含めてバランス良く聴いていないとストレスがたまります
好きな食べ物/好き嫌いがないのが、自慢です
出身地/北海道
趣味/音楽・合唱・声楽
子供の頃の夢/科学者
尊敬する人/マリー・キュリー(尊敬とは少し違いますが、子供の頃のヒロイン・イン・マイ・ハートでした)
愛読書/硬軟取りそろえて、いろいろありますが、最近良く読んでいるのは、宮部みゆきかな・・・まんがも好きです
休日の過ごし方/家の中のことを集中的に処理、趣味の練習。ほんとは、なぁんにもせず、ゆっくりしたいのですが・・・

法学部 法律学科 井上匡子教授

法律や制度が目まぐるしく変わる現代こそ、
法律の土台について考えることが大切。

法が拠って立つ土台を学ぶのが「法哲学」

法学部の法律科目の多くが既存の条文を前提として、その解釈を学ぶのに対し、私が教えている「法哲学」は、「法とは何か」「法の目的は何か」「法の機能とは何か」など、法律の土台や基礎を、社会や人間のあり方などの観点から勉強する学問です。法のなかにどういう理念があるのか、例えば自由と平等の関係など、そういうものを整理するのが法哲学の重要な役割の一つ。理念を整理してみると、現実には鋭く対立している立場に意外な共通点があることが分かったり、逆に具体的な政策・施策としてはそれほどの違いがなくても、将来にわたって大きな違いがでる可能性があることが分かったりします。それから、法律の勉強をするなかで、これはおかしいと疑問に思うことがあったとします。それを単なる愚痴や自己中心的な主張ではなく、学問的に意味ある批判として展開できるようになるための道具や技術を身につけることが目標です。

法律は変わらないものというイメージが強いと思いますが、今の日本は立法・改革の時代。ものすごい勢いで法律や制度が変わっています。そういうときにこそ法の土台(=拠って立つ理念)についての考察は不可欠だし、面白いのです。

アグネス論争と夫婦別姓からフェミニズム理論研究へ

私自身が研究テーマにしているのは、18世紀イングランドの思想史と現代的なフェミニズム理論研究です。前者は近代がスタートする場面での思想で、後者は近代の捉えなおしの一環。このふたつを、市民社会論の観点から、橋渡しするような方向で研究を進めたいと思っています。

もともと思想史を専門にしていた私がフェミニズム理論に興味をもった理由はふたつ。アグネス論争(87年にアグネス・チャンが出産後、番組に復帰するためにテレビ局に「子連れ出勤」したことがマスコミに取り上げられ、その是非について巻き起こった論争)を、論争の随分あとになってからですが、まとめて報告する機会がありました。その時に、フェミニズム理論のもつ社会理論としての広がりと可能性を感じました。もう一つは夫婦別姓です。私は大学院生の時に結婚して「井上」から「町村」に姓を変えましたが、ドクター論文の公表をきっかけに、戸籍名はそのままに、旧姓の「井上」で生活をすることに決めました。当時勤めていた大学では、論文の公表はともかく、講義は戸籍名で行わないとダメと言われるなどいろいろあり、理論武装する必要があったこと。そして、選択的別姓制度への法律改正をもとめる市民の集会に参加するようになり、そこで今まで机の上で考えてきたことが、現実の中で試される経験をし、たくさんのことを教わりました。

ちなみに、今は全て「井上」で通しています。一番嬉しかったのは、最初は私の名字が変わることに反対していた息子が、ゆっくり時間をかけて私の気持ちを伝えていったら、あるとき学校の先生に「うちのお母さんは別姓で僕と名字が違うから間違えないでね」と言ってくれたこと。あのときのことは忘れられません。

疑問や直感を大切に学んで欲しい

大学の講義、特にゼミは、失敗しながら学べるとても良い ―― もしかすると唯一の ―― 機会です。何を学んだかよりも、どうやって、どの程度学んだかということの方が大切なのかもしれません。ゼミの仲間の前で報告したり、他のゼミ員の意見を引き出したり、整理して、議論を作り上げていく、そして一定の方向づけを与えていく・・・といった作業は、社会の中で必要とされる最も重要な能力の一つです。また、「なぜ、そうなるのか」という疑問や、「それはおかしいのじゃないか」という直感を大切にして、学んでみてください。そして、そういう疑問や直感を客観的なデータや方法論で裏打ちしたり、先人の議論からヒントを得つつ、他人に説得力ある形で主張することを覚えて欲しいと思います。

帰国直前に撮った息子の写真
94年〜95年にかけて小学1年生の息子を連れてエディンバラへ留学していた。子連れで留学なんてという批判もあったが、子供のおかげで学校や地域社会とつながりが持て、現実の社会を見聞きすることができたので結果的には大正解!写真は帰国直前に撮った息子の写真

論文『A・スミスにおける同感判断の重層構造』
生まれて初めて学会誌に載った論文。『A・スミスにおける同感判断の重層構造』。内容的にはつたないけれども真摯に取り組んでいたなぁとしみじみ感じる。圧倒的な量と質で押し寄せてくるフェミニズム関係の諸問題に対応するのに忙殺され、研究になかなかエネルギーを割けない現在の自分に対する自戒の念を込めて