法学部 自治行政学科
江口 隆裕 教授
Eguchi Takahiro

専門分野 社会保障法

生年/1952年
血液型/O型
出身地/神奈川県
家族構成/妻と娘2人
趣味/テニス、猫と戯れること
子供の頃の夢/数学者
休日の過ごし方/仕事をするか、テニスをするか、家庭菜園の手入れをするか…
好きなTV番組/FOXなどでアメリカのドラマを観ることが多い
好きな国/かつてはフランスだったが、近年アメリカナイズされてきたので、今は特にない

法学部 自治行政学科 江口 隆裕 教授

「社会保障」は私たちの生活に密接に関わる制度。
“正しく理解する”ことが大事です。

社会保障全般に携わった厚生省勤務時代

私が大学の法学部で学んでいた当時は、学生運動も盛んでしたし、急激に成長する社会の中で困窮している人たちが間近にいたりなど、学生といえども世の中の動きに関心を持たざるを得ない時代でした。自ずと社会に貢献したいという気持ちが芽生え、公務員試験を受けて卒業後は厚生省(現在は厚生労働省)に入省しました。25年間の勤務の中で社会保障全般に携わり、医療保険改革、年金改革、福祉改革、介護保険制度創設など大きな改正に参画しました。

また、在省中にパリでの在外研修も行いました。この経験を通してフランスの社会保障制度に興味をもち、それ以来、研究のテーマとしています。フランスの社会保障は日本と比べるとはるかに複雑で、まったく異なる思想のもとにつくられている興味深い制度です。近年は、フランスとマグレブ諸国の移民問題についても研究しています。同じく在省中、母校の北海道大学法学部に助教授として赴任しましたが、このときにまとめた論文をもとに出版したのが『社会保障の基本原理を考える』(有斐閣)です。厚生省を退職したあと筑波大学で教鞭をとることになったのは、この本がきっかけでした。前述した厚生省での本来の業務経験に加え、こういった経験が現在の自分の礎となっていると思います。

いたずらに不安を抱いていませんか?

担当講義は「社会保障法」です。皆さんもよくご存じの通り、私たち国民の生活を支えることが社会保障の役割であり、大学生や高校生であっても密接な関係のある制度です。最近は生活保護が世間の注目を浴びていますが、このほかにも、医療保険や介護保険、年金、さらには子育て支援など多岐にわたり、講義ではこれらの制度についてなるべくわかりやすく説明するとともに、なぜこのような制度がつくられたのか、現在の制度にはどのような課題があるのか、といった点を理解してもらうよう心がけています。

近年、生活保護や年金はじめ、社会保障をめぐってさまざまな議論が行われていますが、テレビや出版物などが発信する情報に踊らされ、いたずらに不満や不安を抱いている人も少なくないように感じます。以前、日本人とフランス人各100人に、介護と相続に関するアンケートを行ったことがあります。「自分が高齢者になったら誰に面倒を見てもらうか?」という問いに、フランス人には「隣人や友人」と答える人がいた一方、日本人はすべて「家族か政府」と答えました。この答えには両国の国民性が表れていて興味深いものがあります。もし暮らしを政府に委ねるのであれば、相応の負担は覚悟しなければなりません。ただその前に、社会保障制度がどのようなもので、どこに問題があるかといった実態をよく知り、税金や保険料などに関しても正しく理解したうえで、自分の考えをしっかりと持つことが必要なのではないかと思います。

大事なのは“How to think,How to learn”

今の時代は非常に変化が速く、これまで持っていた知識や経験の賞味期限はすぐに切れてしまいます。それため、自分だけが時代に取り残され、迷子になったような気持ちで生きづらさを感じている人が多いように思います。このような時代を生き抜くためには、他人に頼らずに自分の頭で考え、自分で物事の判断ができるようになることが、なによりも大事だと考えます。そのためには、自分を取り巻くさまざまなことに関して“なぜ?”という疑問を持ち、常日頃から自分の力で答えを見つける努力をすることだと思います。もちろん情報も必要ですが、容易に手に入るマスコミやインターネットの情報から他人の解釈を鵜呑みにするのではなく、情報の原点にあたることが大切です。

ゼミでは、各自が社会保障に関するテーマを取り上げ、調査・研究した結果を発表してもらいます。テーマは、年金、障がい者支援、介護問題、震災復興など、自らが問題を感じている分野を選んでいます。発表後は、ほかの学生から必ず質問をしてもらいます。このようなやりとりを積み重ねるうち、発表者も質問者も意識が高まり、テーマが深化していくのです。大学で第一に身に付けるべきことは、物を考える力やそれを文章にまとめる力であり、大学はそのトレーニングをする場所です。もちろん法学部の学生として、憲法や法律の基本知識を勉強することも大切ですが、こういったことは実社会で経験を積みながら学ぶこともできます。まずは“How to think,How to learn”を身に付けましょう。将来どのような仕事に就いても、きっと役に立つはずです。

医療保険、年金、子ども手当に関する著書三部作
医療保険、年金、子ども手当に関する著書三部作。1996年に出版した『社会保障の基本原理を考える』(有斐閣)は、大学教員になるきっかけになった。その後2008年に『変貌する世界と日本の年金―年金の基本原理から考える―』(法律文化社)、2011年に『「子ども手当」と少子化対策』(法律文化社)を刊行

ンポジウムで、日本の介護保険制度について報告した際の様子
2009年、パリのCNSA(全国自立連帯金庫)主催のシンポジウムで、日本の介護保険制度について報告した際の様子