法学部 自治行政学科
川瀬 博 教授
Kawase Hiroshi

研究分野 環境政策、環境学

生年/1947年
血液型/AO型
出身地/横浜
家族構成/妻、子供は男3人
趣味/ハイキング、映画鑑賞
子供の頃の夢/研究者になること
愛読書/文学作品、評論、詩、漫画など、その時々に
休日の過ごし方/野菜作り、散策、家事(布団干し、洗濯物干し、食器片づけ)、準主夫業をしています
好きな映画/イタリアの映画監督(F.フェリーニ)の作品から、現代の娯楽作品(宮崎駿のアニメ作品)まで、幅広く何でも
好きな音楽/モーツァルト、サウンドトラック
好きなTV番組/ニュースとドラマ
好きな著名人/吉本隆明、手塚治虫
好きな食べ物/日本そば、寿司
好きな国/特になし

法学部 自治行政学科 川瀬博 教授

自然は未来からの預かりもの。
「守る」だけでなく「増やす」ことも大切。

実は「緑が多い=自然が豊か」とは言いきれない

私の研究テーマは、都市における自然保護。生態系の保全(いろいろな生き物が生きていける環境を守る)について、環境政策や環境学から解きほぐしていくことです。

担当している「環境行政特論」(1年次生を対象)は、地球環境問題などを解決するために自治体は何を行っているのか、などについて自治体の目線に立って「環境」を考えていく授業です。環境問題の現状については、DVDやビデオ等を用いて理解を深めています。こうした視聴覚機器を用いた授業の方法は、学生に好評です。

私はもともと理学部出身なのですが、横浜市の職員として働いていた頃、都市の自然保護行政に関わり、法律関連の知識はその時期に仕事を通じて学びました。そして環境政策という仕事を通して生態系の評価手法という分野に興味を持ち、博士(学術)号を取得しました。

生態系の評価というのは、そこにある生態系の「質」を見極めるということです。生態系の「偏差値」と言い換えてもいいでしょう。植物があるだけでなく、そこに昆虫、鳥、蛇、さらに猛禽類やタヌキなどといった生物が棲息していて、食物連鎖が成立しているかどうか、あるいは反対に、死んだ生物や落ち葉などを分解する腐食連鎖が機能しているかどうかを評価する。そして、そうした連鎖がきちんと成立しているのが、生態系の偏差値が高いということなのです。一般に「緑が多い」=「自然が豊か」と思われがちですが、実は緑のパーセンテージが高くても、それが新しく植えられたばかりの緑、たとえば新興住宅地の公園などでは生態系の偏差値はまだ低く、逆に緑のパーセンテージは低くても、昔のお屋敷が持っていた古い林などは偏差値が高いのです。

現代は自然とのつきあい方が問われる時代

このように、私は仕事を通して森林の生態学に興味を持ちはじめ、結果的に研究の道へ進みました。ゼミ生たちにも、環境について考える時には、まずは自分自身の関心をきっかけにすることを勧めています。地球温暖化や生物多様性などという大きなくくりで環境を捉えるとなんだか他人事のような気がするものですが、よくよく考えれば、こうした問題のすべては私たちが暮らしている身近な環境から始まっていること。ですから環境問題については、自分の関心があることを、自分との関わりから見ていくこと。自分に寄せて考えていくことが大切です。

私は、自然というものは「未来の世代からの預かりもの」ではないかと思っています。だから自然を守るだけでは不十分で、むしろ増やして利子を付けて返していかなければいけないのではないか、と。これからは、そういう発想で自然を見ていくことが大切なのではないでしょうか。そういった意味でも、現代人は自然とのつきあい方が問われている気がします。人間中心の見方ではなく、植物や動物たちの立場から逆に人間を見る。自然の目線に立った世界の見方が、今の我々には要求されているのです。

多くの人が暮らす都市にこそ、緑が必要

最近発表された都市における自然環境に関する研究結果で、とても興味深いものがありました。これまで「緑のあるところに行くと癒される」という説は、一般的に認められてはいるものの、科学的な因果関係は証明されていませんでした。ところが、ストレスが高くなると分泌される唾液アミラーゼという物質の量を測定した結果、もともとストレスをためやすいタイプの人の場合、ビル街ではその分泌量が増え、緑が多い場所では減る、という測定結果が出たというのです。

新しい都市計画においてはビル街にも緑を多く配置するようになってきていますが、それが実際にどのような影響を与えているか、ということはこれまであまり研究されてきませんでした。ところが今回の結果で、ストレスに弱い人にとってはビル街に緑があるだけでかなり癒される、ということが科学的にも確認されたわけです。多くの人が暮らす都市にこそ、身近なところに自然が必要だということですね。

このように現在では、二酸化炭素の吸収や生物多様性といった物質的な側面だけでなく、メンタルな部分でも人間にとって植物が重要な存在だということが科学的に証明されつつあるのです。こうした「精神環境としての自然」についての研究は、今後もさらに進んでいくでしょう。そして日常生活圏にもっと緑が必要だと人々が認識し、緑が増えていけば素晴らしいですね。そして私自身、少しでもその手助けができれば嬉しく思います。

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