人間科学部 人間科学科
松永 理恵 准教授
Matsunaga Rie

研究分野 認知科学、認知心理学、音楽心理学、実験動物学、感性情報学・ソフトコンピューティング

出身地/三重県伊賀市 子供の頃の夢/発掘作業を行う考古学者
愛読書/村上春樹の「遠い太鼓」、宮部みゆき、小泉文夫、柴田南雄
趣味/ラジオ、テレビゲーム(特に、レベル上げ)、猫
好きなTV番組/SHERLOCK
好きな著名人/「日曜天国」の安住紳一郎
好きな食べ物/麻婆豆腐、栗

人間科学部 人間科学科 松永 理恵准教授

人間は、言葉と同じように、音楽も自然と学ぶ。音楽の学びを知ることから、人間とは何かを考える。

音楽は心理現象。誰もが、心の中に、複雑で精妙な音楽理解の仕組みを形成している

私は、人間の普遍的な心理機能の一つである「音楽」に焦点を当てています。例えば、目の前にピアノがあったとします。そのピアノを使って作り得る音の並びは無数にありますが、私たちは音の並びの全てを「音楽」として認識するわけではありません。ある並びは音楽として受け取りますが、ある並びは音楽としては受け取りにくいと感じることがあります。このような音楽らしさを判断する心理学実験を行ってみると、同じ文化環境に育ち、同じ年齢帯の人々は、専門的な音楽教育訓練の有無を問わず、その判断はだいたい同じになります。このことは、同じ文化で同じ年齢帯の人々ならば、その多くが共通して何らかの音楽的な知識(スキーマ)を身につけており、それに基づいて「音楽」を理解していることを意味します。

では、私たちが「音楽」として認識する心の仕組みはどのようなものなのでしょうか。また、その仕組みは、アジア、アラブ、アフリカ、欧米などの文化の異なる聞き手、子どもと大人の間では違うはずですが、それはどのように、どの程度違うのでしょうか。

私はこのような疑問の解明を目指し、文化と発達の視点を取り入れながら、心理行動実験、脳機能計測実験、コンピュータシミュレーション実験を行っています。

自分の考えていることを意識化、言語化することが重要

現在、私が担当している講義は、一般教養の「社会と人間U」です。この講義では、人間科学部以外の学部生が多いです。そのため、『百(論)文は一(体)験にしかず』と言われるように、心理現象を体験してもらうことから始め、その後に、その現象が生じる仕組みを解説するようにしています。そうすると、多くの学生から「心理学はこれほど自分の身近なことだったとは知らなかった」という感想が聞こえてきます。

専門ゼミでは、学生に認知心理学の専門的な知識・技能を習得してほしいということはもちろんのこと、それと共に、自分の考えていることを意識化、言語化して、他人に伝えるスキルを習得してほしいと考えています。ゼミでは、学生自身が自分の選んだ専門書や論文を発表します。ゼミの途中で、他の学生に「今までの話は理解できましたか」と私が尋ねると、たいていの場合「大丈夫です」という答えがかえってきます。そこで、私は「では、今、発表者が説明してくれたことをもう一度、あなたの言葉で説明してください」と投げかけると、多くの学生は、自分が"なんとなく"分かったつもりでいたことに気づきます。また同時に、発表者は、自分の説明では他人は理解できていないということにも気づきます。

お互いが理解できていないと認識することが、議論の第一歩です。また、言語とは、自分が世界をどのように理解しているかの現れだと、私は考えています。自分の思考を意識化し、言語化することで、今まで見ていた世界の見方が変わることもあります。

卵の中にいる限り、卵の形はわからない。一歩踏み出してみよう

私は、大学入学当初は臨床心理士になりたいと考えていましたが、講義を受けていくうちに自分には向かないとわかりました。その時は将来の目標を失い、どうしていいか分からず、かなり困っていたことを覚えています。そして、ゼミを選択する時、いっそのこと最も厳しそうに見えるところに入ってみようと、深く考えずに認知心理学のゼミに決めました。けれども、そこで音楽認知の研究テーマに出会い、卒業研究で取り組んだテーマを約20年たった現在も続けています。『人間万事塞翁が馬』という故事がありますが、何が良いか悪いかは分かりません。

学生からは、将来自分が何をしたいのか分からない、ということをよく聞きます。それは自分が知っている世界から出ていないからかもしれません。卵の内側(自分の世界)にいるままでは、卵の形を知ることはできません。転がったり、ぶつかったりなど行動をした時に、初めて、卵の形を客観的に推測することができます。失敗して当たり前。まずは一歩踏み出してみてください。

『音楽と認知』(東京大学出版会)
学生時代、何もわからずに飛び込んだ認知心理学のゼミでめぐり会い、専門研究を始めるきっかけになった書籍、『音楽と認知』(東京大学出版会)。20年たって今でも読み返し、自分の理解が足りなかったと気づくことが何度もあります (現在は新装版となり、シリーズ名も変更されています)

愛猫のコウヤとサク
愛猫「コウヤ」(左:5歳、オス)と「サク」(右:7歳、メス)。サクとは札幌で出会い、1年間のドイツ留学も一緒に行きました。帰国後に出会ったコウヤは浜松生まれ。二匹とも、私の帰宅を玄関で待っています