人間科学部 人間科学科
北岡 祐 准教授
Kitaoka Yu

研究分野 運動生理・生化学、エネルギー代謝、骨格筋生物学

生年/1984年
出身地/愛知県名古屋市
家族構成/妻、息子、娘
尊敬する人/両親、恩師
愛読書/沢木耕太郎「深夜特急」、村上春樹「遠い太鼓」などの紀行文
趣味/旅行、スポーツ観戦
休日の過ごし方/家族と散歩
好きな映画/「小さな命が呼ぶとき」
好きなTV番組/「おさるのジョージ」
好きな国/カナダ

人間科学部 人間科学科 北岡 祐 准教授

乳酸は本当に悪者?自分の感じた疑問を大切に。

乳酸は疲労物質ではなく、重要なエネルギー源

運動時に筋肉で産生される「乳酸」という物質について研究しています。乳酸と聞くと、「疲労」という言葉を連想する人が多いかもしれませんが、実のところ乳酸と疲労にはあまり関係がないのではないかという考え方が研究者の間では広まりつつあります。

私は、学生時代には陸上競技部に所属し中距離走に取り組んでいましたが、競技の後半に脚が動かなくなるのを、当時は当然のように乳酸が溜まったせいだと思っていました。けれども、スポーツ科学の研究に取り組むようになり、遺伝的な筋肉の病気の患者さんの協力から得られたデータや競走馬の筋肉の分析などを積み重ねていくと、乳酸は疲労物質ではなく、実際には私たちの体にとってエネルギー源となることや、トレーニングによる適応をもたらすシグナルとなる可能性もあることがわかってきました。近年では、血中の乳酸濃度を測定したデータをうまく活用して効率的にトレーニングを行うことで、競技成績の向上に繋げることも期待されています。

科学的な思考力を身につける

定期的な運動が健康に良いこと、あるいはトレーニングによって身体能力が高まることはよく知られていますが、そのメカニズムについては多くの謎が残されています。私の担当する「人間科学専門ゼミナール」では、遺伝子、細胞から個体レベルまで幅広い視点から、乳酸を中心とした運動時のエネルギー代謝について考えます。その中で、単に実験手法や知識を身につけるだけでなく、「なぜ(Why/How)」という自分の感じた疑問を大切にし、科学的な思考力を身につけて欲しいと思っています。

私のゼミでは、学生全員が積極的に議論に参加し、発言することを求めています。前任校では、陸上競技やサッカーなどのスポーツ実技種目に加えて、スポーツ科学の授業を英語で行う講義も担当していましたが、留学生の積極性にはこちらが圧倒されるほどでした。私自身がアメリカ、カナダに留学していた時もそうでしたが、日本人の学生は少し大人しすぎると思っています。ゼミでの議論の中で論理的な思考力やプレゼンテーション能力を身につけることは、社会人になってからもきっと役立つと思います。

後から気づくこともある

私が学部生だった頃は、グラウンドで走ってばかりの日々を過ごしていました。理学部生物学科の学生でしたが、退屈に感じていた分子生物学や生化学の講義と、自分の取り組む陸上の中距離走がリンクすることに気づいたのはずっと後になってからでした(講義をもっと真面目に聞いておけばよかったと後悔しています)。今ではスポーツ科学の分野において分子生物学的な実験手法や考え方は欠かせないものになっています。

自分がやってきた陸上競技と学んできた生物学との関連に気づいてからは、研究がどんどん面白くなってしまい、結果としてちょっと珍しい理学部出身の体育の先生ができたわけです。学生の皆さんにも、大学ではいろいろなことにチャレンジして欲しいと思います。その経験は、思いもよらなかったところで将来役に立つことがあるかもしれません。

研究室のメンバーからもらった寄せ書き
2012〜2013年に、カナダのマクマスター大学医学研究科で研究員として勤務。息子は研究室と同じフロアで誕生しました。帰国する際に研究室のメンバーからもらった寄せ書きは今でも大切にしています。I know you will be an excellent professorというボスからの言葉を胸に…

International Early Career Physiologist Travel Award
マッカードル病という筋肉の病気に関して留学中に行った研究について、アメリカ生理学会よりInternational Early Career Physiologist Travel Award(2013年)を頂きました。帰国後には、競走馬に関する研究について日本ウマ科学会奨励賞(2015年)、乳酸に関する研究についてヤマハ発動機スポーツ振興財団審査委員特別賞(2016年)と、いろいろな学会や財団から賞を頂いたことは大きな励みになっています