人間科学部 人間科学科
川上 満幸 教授
Kawakami Mitsuyuki

研究分野 産業人間工学

出身地/島根県
子供の頃の夢/医者、教師、政治家
尊敬する人/世界的な学者であり教育者である、西澤潤一先生
愛読書/研究に関わる専門書、歴史書(戦国武将の生き方は、現代の組織運営を考える際に役立つ)
趣味/海釣り
休日の過ごし方/身体を休める、犬と遊ぶ
好きなドラマ/「宮廷女官チャングムの誓い」「3年B組金八先生」
好きな音楽/お酒を飲む時、演歌を聴く。特に心を打たれるのは、美空ひばり
好きなTV番組/ニュース番組
好きな国/フィンランド、スウェーデン、スイス

人間科学部 人間科学科 川上 満幸 教授

大学は、入ってからどう過ごすかが重要。
将来の目的に対し「夢と希望そしてロマン」を持ち続けることが大切です。

生産性向上と人間性尊重が調和するシステムを設計

私は人間工学や経営工学の一分野である、産業人間工学を専門としています。それがどういうものか、過去に私が手がけた研究を例に説明しましょう。

19世紀にイギリスで産業革命が起こって以来、工業先進国は“分業”の概念に基づいた生産方式を構築したことにより大量生産を実現し、経済発展を遂げてきました。その生産方式のポリシーは、コストと能率の論理を基本にしたもので、人間は機械の一部のように労働に従事させられてきたのです。生産現場では作業が細かく分割され、朝から晩までコンベアによる時間規制(ピッチタイム)と単純化された作業により、作業者は単調感、仕事に対する無気力感など人間性を軽視した内容が現出したのです。本来、人間には考える力や想像力、判断力、主体性があり、そういった能力を活かした仕事に従事させることが重要です。しかし、コストと能率の論理を主体とした考え方は、人的要素つまり、そうした人間性は軽視されてきたのです。この生産方式は今日まで世界の経済成長の原動力になり、人類に多くの富をもたらし、物理的な意味での満足感を与えました。しかしながら、人々にとって最も重要なものは何か?という疑問から、私は生産性向上と人間性尊重の調和を目指した生産方式を設計するという研究課題に取り組んだのです。

生産性向上と人間性尊重の調和というのは、非常に難しいものです。なぜならこれらの要因は、互いに相反するものであり、両立することが困難だからです。そこで私は、“遊び”というものを分析し、その機能を仕事の中に組み込むことで、これら二つの要因の調和を試みました。たとえばボーリングという遊びは、まず目標を定めて、どういう方法でどの方向に投げるかを頭の中で計画し(Plan)、投げ(Do)、その結果がすぐにフィードバックされ、ピンが残った場合はその結果で何故ストライクとなる投球ができなかったのかを分析し(Check)、次の球を投げる方法、改善策を提案する(Action)。このPDCAのサイクルを循環させることで、目的に対する達成感、充実感、満足感が得られ、主体的行動が取れることで人間は生きがいをもつのではないでしょうか。

また、遊びと仕事の違いについて考えてみると、遊びはある程度、行動や時間を自分で判断して選択できるため、拘束されることがありません。そこで仕事でも自己責任において、作業者に自由裁量権を与えてはどうかと考えつき、それを取り入れたシステムを設計し、実際の生産工場ラインで実証しました。

このように人的要素に配慮したシステム設計の基本は「人の心の豊かさが前提になる」との考え方に立脚しています。

健康管理も産業人間工学の重要な要素

産業人間工学は、人間が働くうえでの人的要素に配慮したシステムを設計する学問ですから、たとえば高齢者や障害者といった方たちも対象になります。人間が長寿であることは喜ばしい現象でもあり歓迎すべきことですが、「健康で明るい社会生活を営めることが前提」になると思います。すなわち、人間の働くシステム設計の前提には「人の心の豊かさ、心身の健康」が重要になると思います。このような観点から、現在、私の担当科目の一部に「健康学概論」や「健康管理学」があり、私は授業を通して、健康管理の基本である運動・栄養・休養に関することや、食料問題、環境問題に至るまで、健康を取り巻くさまざまなことを教えています。

また、教育も人間を対象にするものですから、当然、学生の主体性を認めることが重要だと思っています。たとえば、私が授業のガイダンスで、最初に受講生と約束することは、(1)人としての礼儀作法(2)自己責任(3)他の学友に迷惑をかけない、たとえば私語、雑談は禁止とし、どうしても我慢できない人は寝るか、静かに退室する(4)ノートの取り方(最終評価の対象)の4項目を学生と教師の信頼関係を前提に厳守しています。

偏差値や学歴コンプレックスは、今日限りで捨てよう!

大学は、どこの大学に入るかではなく、入ってからどう過ごすかが重要です。学生の中には、これまでの偏差値教育にとらわれて、学歴にコンプレックスをもっている人もいるかもしれませんが、私は「そんなもの今日限りで捨てなさい」と言っています。コンプレックスを引きずっていると、人間は成長しないからです。現に私の授業を受講している学生の成績評価は非常に優秀です。つまり、素直な青年たちは鍛えれば鍛えるほど成長する学生が多いのです。学生には、本学で四年間をかけて、本気で挑戦してみなさいと言っています。生涯の中で、自分はこれだけのことをやり遂げたと自分の子供に胸を張って話せるくらいに学生生活を送ってもらいたいと思っています。

世界に向けて神大生としてのプライドをもち、共に羽ばたきましょう。

人生の師と呼べる西澤潤一先生に「若い教員の指導を頼む」と頂いた色紙
前任の大学で学部長になった際、人生の師と呼べる西澤潤一先生に「若い教員の指導を頼む」と頂いた色紙

ヘルシンキの研究所に留学中、ヘルシンキとスウェーデンのストックホルムを結ぶ世界最大級のフェリー“シリヤライン”に乗船し、撮影した風景
1998年、フィンランドの首都ヘルシンキの研究所に留学中、ヘルシンキとスウェーデンのストックホルムを結ぶ世界最大級のフェリー“シリヤライン”に乗船し、撮影した風景