人間科学部 人間科学科
横倉 節夫 教授
Yokokura Setsuo

研究分野 現代の日本社会の変動と人間の問題、地域社会学・産業社会学

出身地/横浜市
愛読書/『フォースター評論集』(岩波文庫)は、繰り返し読みたくなる1冊。優れたバランス感覚とやわらかい思考が心地いい。『インドへの道』『ハワーズ・エンド』などの小説も好きで、研究室にはフォースター全集が置いてある。また、魯迅の弟である周作人や幸田露伴の随筆などもよく読む
休日の過ごし方/ゴロ寝
生年/1948年

人間科学部 人間科学科 横倉節夫教授

問題を「発見」すること。
そこに本当のオリジナリティがある。

社会は人と人とのつながりでできている

「人間科学概論」は人間の<心><身体><社会>についての人間科学部としての総合的な入門講義で、私が担当しているのは、人間と<社会>の関係についての部分です。<社会>というと漠然としたイメージですが、日本や大都市といった大きな社会でも、ご近所同士の小さな社会でも、それを構成しているのは人と人とのつながりです。学級崩壊も、先生と生徒、あるいは生徒同士のつながりが途切れてしまって、その結果、学級という社会が崩壊してしまったということ。家庭も同じで、最近は核家族どころか「個化」といって、家族のなかでも限りなく一人になっていくんです。一人一部屋で、テレビも電話も一人一台ずつ、当然、食事もひとりずつ。そんな時代だからこそ、人とのつながりについて考えるのは大切なことです。人と人との関係は、いろんな形で結ばれたり、失敗して途中で切れてしまったり、切れたものをふたたび結んだり、さまざまなパターンがあって複雑なもの。それでも他者と絆を結び合おうとする理由や、そもそもなぜそんなことが必要なのか、などについて考えていきます。

ちなみに、日本語では「人」という漢字を説明するとき、お互いに支え合って生きている、という意味だといいますよね。でも中国では、大地にすっくと立っている、っていうイメージなんだそうです。確かに、支え合うより先にまず自分がすっくと立て、って思うから、僕はそっちの解釈の方が好き(笑)。本当は、すっくと立ちながら支え合う、支え合いながら、すっくと立つ、っていうのが理想なんでしょうね。

現代社会についての知識は現代的教養

一方「現代社会論」の講義では、20世紀後半から21世紀にかけて「情報化」「少子化」「グローバリゼーション」などによって大きく変化してきた現代社会のあり方と、それにより人間のパーソナリティや人との関係までが変化していった過程について学びます。

例えばAさんという人物に会うとき、相手に対してあるイメージを抱いているはずです。それを持ってAさんと向き合い、実際に会って関係を結んで行くなかで、場合によってはイメージを修正していくわけです。ところが「情報化」は、そうしたイメージの世界を必要以上に増幅したり、極端な場合、本物が存在する必要までがなくなってしまったのです。端的なのはメル友という存在でしょう。実際には会ったことのないメル友は本当に友人なのかという問題。あるいはメールでのやりとりが現実だと思い込んで、ひどい被害を受けてしまうなど、こうした事例は事欠きません。それまでは本物に接することで修正していた情報が、本物がどこかへ行ってしまったためにイメージの修正がきかない。場合によってはイメージだけがどんどん大きくなってしまってブレーキがかけられない。このように社会状況の変化が、人間のパーソナリティそのものも大きく変えてしまったのです。

こうした変動の激しい「現代社会」のこれからを担っていくのは、まさに今、高校生や大学生の皆さんです。だからこそ、こうした現代社会のあり方は、将来、どういう職業につくにしても基本的な教養のひとつになるだろうと思います。現代的教養のひとつとして、どんな学科の学生さんにも知っておいてほしいですね。

大切なのは問題発見

現代社会で生きるのは、正直、大変なことだと思います。けれど、その一方で現代はいろんな可能性がひらけている、とても面白い時代でもあります。だから僕は学生さんたちに、短い時間でもいいから外国へ行ってごらんなさいって言うんです。肌で感じて、与えられたイメージがどう変わるか、なにを感じるか確かめにいってごらんなさい、と。与えられた勉強をただこなすだけではなく、自分の体であたって、肌で感じたことを大事にする。それが大学で勉強する出発点ですから。大学では自分で問題をつかみだすことが大切なんです。よく「問題解決」といいますが、僕はむしろ「問題発見」の方が大切だと思います。問題を発見することが、その人にとっていちばん大きなことで、オリジナリティとか個性っていうのは、多分、そこに現れると思うんです。自分ならではの問題の捉え方や感じ方を大事にしていくことは、人生を豊かにしてくれます。単に職業人としてだけではなく、一社会人また一人の人間として、「賢く」そして「潔く」生きていく基礎を作ってください。

『逗子の市民自治と生活ルネッサンスーみどりと平和と自治を求めて』と『共同と自治の地域社会論』
地域自治運動の転換点ともなった、80年代初頭の逗子の米軍住宅建設反対運動の経過を追った著書『逗子の市民自治と生活ルネッサンスーみどりと平和と自治を求めて』(自治体研究社)と、その後の市民自治や自治体などの動きをまとめた『共同と自治の地域社会論』(自治体研究社)

記念にもらったパンダのプレート
上海に進出した日本企業の研究などで交流のある上海社会科学院から、記念にもらったパンダのプレート。“中国国宝-大熊猫”の文字が書かれている