外国語学部 スペイン語学科
西田 依麻 助教
Nishida Ema

専門分野 スペイン文学

出身地/東京
血液型/B型
趣味/美術鑑賞、フラワーアレンジメント、アロマテラピー
子供の頃の夢/漠然と考古学者に憧れていました
尊敬する人/真摯に、そしてひたむきに物事と向き合う人
愛読書/『ドン・キホーテ』(ミゲル・デ・セルバンデス作)、『抱擁』(A.S.バイアット作)
休日の過ごし方/新聞の朝刊をじっくり読みながら朝食をとる
好きな映画/「エル・スール」(ビクトル・エリセ監督)
好きな音楽/日々よく聴いているのはグレゴリオ聖歌。週末に気分を変えてボサノバを聴くこともあります
好きな食べ物/和食はどれも好きです。そのほか仔羊のロースト、マカロン
好きな国/スペイン、イギリス

外国語学部 スペイン語学科 西田 依麻 助教

スペインの口承文芸「ロマンセ」に魅了され、
留学した経験が現在の自分につながっています。

万華鏡のような魅力をもつスペインで生まれた文学

現在の主な担当講義は「スペイン研究Ⅰ(文学)」です。授業では、スペインの文学作品と、作品を生んだ作家について学びます。スペインがあるイベリア半島はヨーロッパの南に位置し、地中海と大西洋に囲まれています。北にはフランスとの国境を分けるピレネー山脈があり、南にはジブラルタル海峡を挟んでアフリカ大陸が広がっています。

スペインというと、さんさんと降り注ぐ太陽、情熱的で明るく陽気な人たち、といったイメージをもつ人も多いと思いますが、そればかりではありません。たとえば、スペインの北西に位置するガリシア地方は、ケルト民族の地であり、ケルト文化の継承によって、どこかスコットランドのような趣もあります。このように、スペインの特徴を単一的な言葉で表現するのは難しいのですが、まるで万華鏡のようにいろいろな姿を見せてくれるところが魅力なのかもしれません。

授業では、こういった地理的環境がもたらす文学作品への影響や、各作品が生まれた時代の流れを、社会的背景と併せて考察します。現在の私たちが読んでみてどう解釈できるのかということではなく、「各作品がその時代にどう読まれていたか」、「どのような意味を持っていたか」、「どのような評価を受けていたか」と、作品が創造されたその時代の知的環境で各作品を認識し理解することを目指しています。

民衆の間で歌い継がれた「ロマンセ」の研究

私が研究の道を歩み始めたきっかけに、スペイン口承文芸のひとつである「ロマンセ」との出会いがありました。15世紀頃からスペインの民衆たちが暮らしの中で好んで歌っていたもので、1行8音節、偶数行に韻を踏んでいます。スペインの歴史や男女の恋愛が歌われていたり、聖書を題材にしたものなどジャンルはさまざま。また、字を読めなかった人たちが口伝えに歌いながら広まったため、多くのバリエーションが存在します。自分流に自由にアレンジする人もいたようで、原型をとどめていないものも見受けられます。

17世紀に入ると、ロマンセは歌の世界を飛び出し、当時の知識人である作家たちを魅了し始めます。彼らは自らの散文作品や演劇作品の中に、誰もが知っており口ずさんでいたロマンセの一節を織り交ぜるようになりました。自身の経験した恋愛をロマンセにのせて詩作していた作家もいます。

私は大学時代にこのロマンセを知り、詩と散文作品と演劇作品が、ジャンルを超えて混じりあい、結晶化し、文学作品として生まれたことに深い興味と感動を覚えました。また、ロマンセを最初に好んで歌い始めたのが、いわゆる教養派層ではない市井の人々であったことから、教養派層と非教養派層の境はどこにあるのか、民衆とはいったい何なのか、といったことなどについても考えさせられました。

恩師との出会いが、専門の道への導きに

「ロマンセ」に出会ったのは、大学3年生の時です。スペインのアルカラ・デ・エナーレス大学より先生をお招きして開かれた「スペイン文学特別講座」を受講しました。一般の方も受講できる公開講座という形式でしたが、学内においては、10回の講義を受け、レポートを提出して認められれば、単位を修得することができる特別科目でした。その講座で学んだ「スペイン民衆文芸」という分野、そして、そこで出会ったマリア・クルス・ガルシーア・デ・エンテリーア先生との出会いが、その後の私の人生を方向づけ、現在の専門に進むことになったきっかけです。授業後に提出したレポートに、大きな字で「Extraordinariamente bien.」(英語にすると「Extraordinary good」)という評価をいただいたことは、とても嬉しく、大きな自信につながりました。

大学卒業後は外資系商社に就職し、約1年3か月勤めましたが、やはり「先生のもとでもっと勉強したい!」という思いを捨てることができませんでした。思いきって退職し、スペインに渡ってアルカラ・デ・エナーレス大学の博士課程へ入学しました。そして先生のご指導のもと、博士論文を執筆しました。論文のテーマは、ミゲル・デ・セルバンデス作『ドン・キホーテ』(前篇1605年、後篇1615年)とアロンソ・フェルナンデス・デ・アベリャネーダ作贋作『ドン・キホーテ 後篇』(1614年)におけるロマンセの引用についての分析です。論文の執筆には苦労もありましたが、異なる文化の中でさまざまな人と出会った留学は、自分を見つめ直し、さらによく知る良い機会になりました。一度就職した会社を辞め、海外に留学するという決断は決して簡単なものではありませんでしたが、自分の強い気持ちに従い行動を起こしたことが、専門の道への導きとなりました。

学生の皆さんにも、ぜひ留学にチャレンジしてほしいと思います。もちろん、私のように大学院への進学を目的としたものでなくてもかまいません。たとえば、語学習得のための短期留学でもいいでしょう。何かを学ぶ意欲をもって行動を起こし、日本とは異なる文化や環境のもとで過ごす刺激的で貴重な経験は、きっと皆さんを成長させてくれるはずです。

卒業論文を書くときに、マリア・クルス・ガルシーア・デ・エンテリーア先生が、スペインから送ってくれたロマンセ詩歌集
大学で「ロマンセにおけるシンボル表現」をテーマに卒業論文を書くときに、マリア・クルス・ガルシーア・デ・エンテリーア先生が、スペインから送ってくれたロマンセ詩歌集。専門の道に導いてくれた先生のサインが入った唯一無二の宝物です

博士論文の公開審査会後の食事会
スペインで飼っていた猫のリオネル
スペイン留学時の思い出の写真。上は、博士論文の公開審査会後の食事会。審査会には、両親や多くの友人が来てくれました。下は、スペインで飼っていた猫のリオネル。よくパソコンの横に寝そべっていました