工学部 情報システム創成学科
山口 幸 助教
Yamaguchi Sachi

研究分野 数理生物学、最適化理論

血液型/A型
出身地/奈良県
子供の頃の夢/看護師、学校の先生
尊敬する人/母
趣味/水族館めぐり
休日の過ごし方/水族館でまったりと時間を過ごすか、家でゆっくり寝ています
愛読書/『鏡の中の物理学』(朝永振一郎著)
好きな音楽/Kalafinaさんの「storia」「夢の大地」(NHK「歴史秘話ヒストリア」のテーマ曲)
好きなTV番組/ここ数年、我が家にテレビはありません
好きな食べ物/焼きそば、抹茶プリン
好きな国/デンマーク

工学部 情報システム創成学科 山口 幸 助教

「なぜだろう」と思ったことを「知りたい」から学ぶ。
そんな純粋な科学的興味を大切にしよう。

生物の生き方を、数学モデルで解き明かす

私が専門にしているのは「数理生物学」という分野。あまり聞いたことのない言葉かもしれませんが、名前のとおり数学と生物学の境界線上にある学問です。そのなかでも私は、生物のふるまいや生き方を、数学モデルを使って解き明かそうとしています。生物現象と数学はかけ離れた分野のように思われるかもしれませんが、たとえば生物一個体一個体が、自分の子どもを最も多く残すためには、どのような生き方をすればよいのかを最適化理論やゲーム理論を用いて計算することで、生物をよりよく理解することができるのです。

言い方を変えれば、数学を自然にすりあわせていく学問といえるかもしれません。ただ、そのすりあわせが実はすごく難しいんです。ある生物がどのように成長して、いつ繁殖をすれば、もっとも多く子孫を残せるかということを、数理モデルをたてて計算して、得られた結果と実際の観察結果を照らしあわせるためには、生物が自然のなかでどれくらいの寿命で生きているかを知り、時間のスケールを合わせなければいけません。もちろん観測結果と一致しなかったり、サンプルが見つかりにくかったりと、いろいろ難しい点はあります。けれど計算結果から「ああ、この生物はこういう環境の影響を受けて、こういう生き方を選んだんだな」という解釈ができたときの面白さは格別。一個体一個体がそういう生き方を頭で考えて選んできたわけじゃないのに、長い歴史のなかで彼ら全体がそういう選択をして生き残ってきたんだなということがわかったときには、すごく感動しますね。

150年前から今にいたるまで解明されていないフジツボの謎

この道を選んだきっかけは、大学2年のときに参加した公開臨海実習でした。私は海のない奈良県出身だったので、野山の植物や昆虫などを観察するのは好きだったんですが、それまで海には馴染みがなかったんです。そこで「海の生物ってなんでこんなに多様なんだろう!」といたく感動したんですね。おかしな形の生物がいっぱいいるなあと思って興味をもち、そこで純粋な生物学科に行くかどうか迷ったんですが、当時学んでいた物理学と数学の技術を活かして生物を解き明かす数理生物学という分野があることを、一般教養の授業でたまたま知って、それも面白いなと。

ちなみに私が研究対象にしている生き物は、海にいるフジツボ(実はエビやカニの仲間)です。生物の性表現はオスとメスの1パターンが多いのですが、フジツボにはそれが3パターンもあるんです。雌雄同体で、精巣と卵巣の両方をもち、そのどちらも活かすもの。雌雄同体に小さなオス、矮小雄(わいしょうゆう)というのが付いているもの。そして雌に矮小雄がついているものという3種類が存在するんです。このフジツボの生態については、ダーウィンが『種の起源』を発表する8年も前に、ダーウィン自身が発表しているんですが、それから150年経った今でも、この小さな雄がなぜ存在しているのか、その理由はまだ解き明かされていないんですよ!そのことを知ってすごく興味がわき、その謎をずっと追い続けているんです。

同じ分野の研究者のなかには実物を見ない方もいるんですが、私はやるからにはぜったい見に行くというタイプなので野外調査にも行きますね。また、各地の水族館のバックヤードに入れていただいて、フジツボを採集して論文をまとめたりもしてきました。観客として見に行くのも好きなのですが、水族館で水槽を見ているとついつい研究テーマを探してしまうこともありますね(笑)

興味をもったことには、とことんくらいついていこう

授業では「プログラミング演習」という講義を担当し、他の4名の先生方といっしょにプログラミング言語Cを一から指導しています。プログラムがうまく動かない学生さんと一緒に、なぜ、あるいはどこが失敗しているのかを考えていきます。

学生の皆さんには、興味をもったことにはとことんくらいついて、しつこいくらい突き詰めて考えてほしいと思っています。私自身、恩師から「君は本当にしつこいね」と言われるほど、わからないことはいろいろ質問してきました。粘り強くて諦めないことが研究者には大事なのです。もちろん研究者にならなくても、そういうものをひとつもっていると強いと思います。

ちょっと話がそれるかもしれませんが、私の好きな本『鏡の中の物理学』(朝永振一郎著)で、著者は科学をする意味について述べています。ひとつは人間の役に立つことを考えること、もうひとつは、自分の興味があるからこそ、それを知りたくて科学をすること、です。二つ目の意味は、工学部より理学部的な考えかもしれませんが、知りたいから知ろうとする科学的興味も大事にしてほしいなと思っています。

朝永振一郎先生の『鏡の中の物理学』は高校時代に出会った大好きな本。また『数理生物学入門』巌佐庸著(共立出版)は自分の研究の原点になった一冊
朝永振一郎先生の『鏡の中の物理学』は高校時代に出会った大好きな本。また『数理生物学入門』巌佐庸著(共立出版)は自分の研究の原点になった一冊。2004年、著者の巌佐先生と出会ったときにサインをいただいたもの。このときは別の院に進学したのですが、その後、先生の研究室に受け入れていただき、いろいろとお世話になった

サンゴにつくフジツボやウミガメにつくフジツボなど、採集した生物標本の数々
サンゴにつくフジツボやウミガメにつくフジツボなど、採集した生物標本の数々。野外調査で採集することもあるし、知り合いの水族館で珍しいものが見つかると取っておいてくれることも。上のポートレイトで手に持っているタカアシガニの脱皮した殻(フジツボ付き)も、水族館の方にいただいたもの