工学部 情報システム創成学科
藤岡 淳 教授
Fujioka Atsushi

専門分野 暗号理論、計算量理論

出身地/横浜
子供の頃の夢/技術者または推理小説家
尊敬する人/ 困難な仕事に対してひるむことなく黙々と挑戦し続けているすべての方々
愛読書/推理小説の『そして誰もいなくなった』、SF小説の『百億の昼と千億の夜』、歴史系の『現代と戦略』
趣味/スポーツ観戦(特にサッカー)、音楽、読書
休日の過ごし方/スポーツ観戦、街歩き
好きな映画/「バーディ」、「夢みるように眠りたい」、「ザ・コミットメンツ」
好きな音楽/ロック(Todd Rundgren、Nick Lowe、高野寛)
好きなTV番組/「タモリ倶楽部」
好きな食べ物/崎陽軒のシウマイ
好きな国/スイス、イギリス

工学部 情報システム創成学科 藤岡 淳 教授

一人ひとりの小さなアイデアが社会を動かす時代。
皆さんも、“考える力”を身につけましょう!

情報セキュリティの根幹である「暗号技術」の研究

情報社会の今、私たちは毎日パソコンでメールを送ったり、インターネットで買い物をしたりしています。その中でやりとりされている情報を守ることを「情報セキュリティ」と呼び、私は、その根幹である「暗号技術」を専門としています。具体的には、例えば、コンピュータでも計算できない大きな数の素因数分解や数学者でも解けない難解な数学の問題をパズルの要領で組み合わせて暗号をつくる、といった研究です。暗号技術には、大きく分けると2つの要素があり、1つは“情報を秘匿する”こと、もう1つは“データを認証する”ことで、私は主に「認証」に携わってきました。認証は、データのみならず通信相手が本人かどうかを確認することもでき、携帯電話利用の課金やインターネットショッピングのクレジットカード決済などでも、広く使われています。

暗号技術は、もちろん安全なものでなければなりませんが、基本的に暗号は破られるものであり、完璧かつ利便性の高い暗号技術は、この世に存在しません。そのため、“安全とはなにか”、“安全性はどう保証すればいいのか”、“安全性を保つように暗号技術を使うにはどうすればいいのか”など、数多くの解決すべき課題があります。利便性を保ちつつ、どのように安全性の高い暗号技術を実現するかという、チャレンジングなテーマに日々取り組んでいます。

暗号研究の黎明期だったNTT勤務時代

小学生の頃にラジオの電子回路に興味をもって以来、ごく自然に工学系へと進み、大学は電気・電子工学科で学びました。そして、そこで通信専門の先生に「暗号」を紹介してもらったことが、現在の道に進む始まりでした。大学では、専門分野以外の歴史や政治学、経済学、哲学などにも興味をもち、教授陣がたいへんユニークだったこともあって、それらの講義を積極的に受講しました。理系の勉強だけでは気づかなかったことについて考えを深める機会でもあり、この経験は専門の研究にも役立っています。学部卒業後は大学院に進んで「暗号理論」をテーマに論文をまとめ、博士課程修了後に入社したNTTでも、暗号の研究を続けることができました。この頃、暗号技術は急速に発展し、さまざまな興味深い手法や理論が考案されはじめた時期で、それと共に自身の研究を進められたことは、とても幸運なことだったと思います。

NTTでは、暗号の研究を行う一方、情報技術分野の標準化を行うISO/IEC JCT1の会議で、日本の他の企業の方や大学の先生と共に日本の意見を主張するなど、国際的な標準化規格について議論する仕事にも携わりました。ほかにも、電子マネーのプロジェクトや電子投票の研究なども行い、また、これらの研究と並行して、数多くの大学で客員を務めることで、知見を深め、人的ネットワークを広げることもできました。NTT勤務時代に携わった研究や業務の経験は、教育の現場でも活かすことができると考えています。

現在の担当講義は「OSと言語処理系」で、コンピュータの基本ソフトウェアであるOS(Operating System)の仕組み、コンピュータの基本部分を抽象化したオートマトンとその言語理論との関係性、それらの応用例としてのコンパイラの動作などについて教えています。OSに関して必要な技術を網羅的に、オートマトンに関しては論理の厳密性よりは例を用いた直観的な理解を、コンパイラに関しては詳細な動作よりは大まかな流れを把握してもらえるように心がけています。

小さなことでも論理的に考える“クセ”をつける

学生の皆さんに身に付けてほしいことは、“論理的に考える”習慣です。特に現在の日本社会で生きていくうえで、“考える力”は必須です。なぜなら、数多くの工場が海外に進出している現状では、基本的な単純作業だけならアジア各国の人たちに負けてしまっていますし、機械的な処理ならば、コンピュータやロボットの出番だからです。私たちに求められているのは“考える”ことであり、極論すれば、現在の日本社会では“考えることができるから給料をもらえる”と言っても過言ではないかもしれません。“考える力”は、どんなに小さなことでも、論理的に考える“クセ”をつけることで身につきます。そのために、まずは“意識する”ことを心がけてみてください。通学の途中でも、サークル活動やアルバイトでも、常に意識して行動していれば、何らかのことに気がつくことがあるでしょう。そして何かに気づけば、それについて、さらにいいアイデアを“考え、思いつく”ようになるはずです。

今は、一人ひとりの小さなアイデアや努力が社会を動かす時代です。皆さんもよくご存じのインターネットにしても、一人ひとりのユーザーの小さな改良が積み重なって発展してきました。政治にしても経済にしても、一部のエリートが社会のシステムをつくり、皆がそれに従うという時代は終わったのです。なにより、ひとりの人間が100の努力をするより、100人がそれぞれ1の努力をするほうが効果的だし、より楽しい社会になると思いませんか?皆さんもぜひ、今何が欲しいのか、何をやりたいのか、何が問題か、を考えることからトライしてみてください。

マフラーは、チューリッヒのサッカークラブチームである「グラスホッパー」の応援グッズのひとつ
NTTに勤務していた当時、1年間客員研究員としてスイスに滞在した。このマフラーは、チューリッヒのサッカークラブチームである「グラスホッパー」の応援グッズのひとつ。スポーツ観戦が好きなので、ときどきこのマフラーを持ってスタジアムに出かけた

初めての共訳書『計算理論の基礎』(共立出版)
初めての共訳書『計算理論の基礎』(共立出版)は、MITのマイケル・シプサ教授の講義をまとめた本。高校生でも読める、分かりやすく面白い内容なので、学生の皆さんにもぜひ読んでほしい