工学部 物質生命化学科
金 仁華 教授
Jin Ren-Hua

研究分野 高分子化学、超分子化学、ナノ材料化学

生年/1957年
出身地/中国
血液型/O型
子供の頃の夢/哲学者
趣味/あえて言えば空想すること
休日の過ごし方/成り行きの空想
尊敬する人/(中国の長い混乱の時代を強く生き貫いた)母。そして日本で巡り会え、ご指導を賜った井上祥平先生と故・西久保忠臣先生。
愛読書/『茶の本』(岡倉天心)
好きな音楽/ジャズのリズム
好きな食べ物/刺身
好きな国/日本

工学部 物質生命化学科 金仁華 教授

好奇心は、行動の原動力。
だからこそ、大切に持ち続けてほしい。

私たちの生活に欠かせない高分子

私の専門は、高分子化学です。高分子とは、その名の通り、大きな分子という意味で、通常、低分子の化合物の分子量が数百g/mol程度であるのに対して、高分子はその百倍、千倍、万倍も大きいのです。そんな高分子に、私たちは毎日のように触れていると言うと、驚くかもしれませんね。しかし、それほど高分子は身近なものであり、私たちの暮らしに欠かせないものなのです。例えば、衣類、建物、携帯電話やテレビ、パソコン、車や飛行機、食品容器や包装に利用されているプラスチック、ゴムや繊維、塗料などに分類される材料、これらすべてが高分子です。また、米や小麦、肉などに含まれる澱粉やタンパク質、もっと言えば、私たちの体内にあるタンパク質やDNAも生体・天然高分子と呼ばれる高分子です。

先端技術では、皆さんが普段、何気なく使っている携帯電話やパソコンの中にも高分子が関係しています。携帯電話やパソコンの中には、それを動かすための電気回路が書かれた基板が入っていますが、それには高分子フィルムが使用されているのです。また、全日空の最新機として導入されたボーイング787の機体にも、高分子材料の一種である、炭素繊維強化プラスチックが使用されています。さらに、制癌剤をガン細胞部位に選択的に運ぶには高分子で作製した独特のナノサイズのキャリアが使われています。これからの再生医療における細胞培養などには高分子が欠かせません。このように日常生活から最先端分野まで、あらゆるところで高分子が存在しているわけです。つまりそれだけ高分子は、用途が広いのです。そこが、高分子を研究する魅力のひとつだと言えます。

大学には、新しい発見・発明と遭遇できるチャンスがある

私の研究室では、単純な高分子だけでなく、高分子と無機系化合物をハイブリット(複合)させてつくる“ナノ材料”の研究に力を入れています。実は最先端分野で活用されている高分子材料は、ほとんどがハイブリッドのものです。例えば、高分子単体では、300度、400度という高温には耐えられないけれど、無機系材料とハイブリットさせると、耐熱性を高めることができます。そんなふうに、既存の高分子にナノ(10-9)次元のハイブリッド構造を設計することで、まったく新しい性能を発現させることができるのです。そのなかでも私の研究室では、特に生物的な仕組みを真似て、自分たちの材料設計に利用することを、ひとつの狙いとしています。

不思議なことに植物や生物には、いたるところにナノ次元の構造が設計されています。例えば、蓮の葉は水に濡れることがありません。というのも、葉の表面に水をはじくナノ構造を持っているからです。また、モルフォ蝶、孔雀、タマムシの羽が示す色彩、真珠の光沢などは、それらの内部にまるで建物作りのように精密に構築された規則的なナノ構造によるものです。植物や生物は、そういう仕組みを自然と作り、自分たちの機能として発現させています。

研究室では、その仕組みを化学的な手法で真似て、材料学に活かそうと取り組んでいます。つまり、高分子という材料を駆使して、生物や植物が持つ複雑なナノ構造を再現したいと思っているのです。そうすることで、さまざまな有用な材料を生み出すことができます。それは全く新しい発見・発明と遭遇できることを意味していますし、その発見・発明したものが世の中の役に立つということは、最高の喜びと幸せです。そういうワクワクするような経験やチャンスが、大学にはあるのです。

好奇心は、すべての原動力

子供の頃、皆さんは好奇心にあふれていませんでしたか?幼い頃は、誰もが好奇心の塊でした。その好奇心は、今、どうしているのでしょう?人は成長の過程で、少しずつ好奇心を失ってしまうことがあります。例えば、高校で受験勉強に向かっているうちに、好奇心がどんどんしぼんでしまったという人もいるかもしれません。しかし、私としては、その好奇心を思い出し、ずっと大切に持ち続けてほしいと思っています。それさえあれば、大学生活はものすごく楽しくなります。大学は、自由度100%です。好奇心の赴くままに、学び、遊び、経験できるのです。好奇心を持っていることは、幸せなことです。だからこそ、持ち続けることが大切。何事も、好奇心を持っていれば、それが行動の原動力となるはずです。そしてそれは、生きがいにも繋がっているのです。

鶴田禎二先生が著した『高分子合成反応』(日刊工業新聞社)
鶴田禎二先生が著した『高分子合成反応』(日刊工業新聞社)。1978年頃、この本の中国語訳を読み、以来、繰り返し読んできた大切な本。高分子化学の本質が明確に書かれていて、高分子化学を専門としない人でも理解を深めることができる一冊なので、来日前、中国の大学で教壇に立った時、高分子化学授業の参考書として使っていた