工学部 経営工学科
松浦 春樹 教授
Matsuura Haruki

研究分野 経営工学、生産・在庫管理、情報管理

生年/1949年
出身地/東京都世田谷区(札幌から福岡まで居住体験あり)
家族構成/妻、息子
趣味/歴史探訪、読書(特にノンフィクション作品)
子供の頃の夢/科学者
尊敬する人/個人名は挙げませんが母校の先生&前任校の理事
愛読書/『幻花行』
休日の過ごし方/授業の準備、散策
好きな映画/旧共産圏の監督の映画(たとえば「ふたりのベロニカ」)
好きな音楽/バッハ以前とニューミュージック
好きなTV番組/地史に関するドキュメント番組
好きな著名人/仲村トオル
好きな食べ物/鯛茶漬け、中華粥、ニシン漬け、堅焼きせんべい
好きな国/旅行先として、ベトナム、イタリア

工学部 経営工学科 松浦春樹 教授

経営工学はまだまだ未開拓な分野。
フロンティア精神を持って取り組める学問です。

今、求められているのは「ほどほどの結果を出す」方法論

経営工学というのは、仕事をどのように進め、いかに効率化していくかという「仕事のしくみ」を学ぶ学問です。なかでも私の主な研究テーマは「製造企業の頑健かつ柔軟な生産計画」。たとえばある企業が工場で製品を生産しているとします。当然、彼らはやみくもに製品を作るのではなく、いつまでにどの製品をどれくらい製造するか、という生産計画のもとに製造を行っています。作業を行う人数や設備、用意した原材料には限りがありますから、効率の良い製造活動を行うためにはかなり綿密な生産計画を立てなければいけません。しかし現実には、急に納期が早まったり、製造数が変わったり、材料供給が遅れたりして必ずしも計画通りに生産が進むとは限りません。こうした状況の変化になるべく左右されない、あるいは柔軟に対応できるようにするのが「頑健かつ柔軟性のある生産計画」です。簡単に言ってしまえば、なにかアクシデントがあっても結果にあまり大きな影響がでないようなスケジュールの立て方、ということですね。

もちろん生産計画のなかには、できるだけ無駄を省いて一番短時間でできるスケジュールを組む方法もあります。そのような計画は確かに効率は良いのですが、たとえばひとつの行程で予定が狂ってしまうと、その後のスケジュールがめちゃめちゃになってしまいます。実はこれって人のタイプにも似ているんです。環境を整えてあげるとものすごい能力を発揮する人と、環境に関わらずほどほどの成果をあげる人。タイプによって違いますよね。たとえば、F1マシンのように、整備士をたくさん付けてギリギリの環境のなかで最高の性能を発揮する車と、どんな環境でもそれなりに走る街乗りの車との違いにも似ているかもしれません。どちらにもそれぞれ長所と短所がありますが、最近、生産計画の分野では、後者のように、いつもほどほどの結果を出すような方法論が脚光を浴びているのです。

経営工学はまだまだ未知のフロンティア

たとえば物理学や生物学などといった学問に比べ、経営工学はあくまでも「現場レベルの話」という捉え方をされることが多いのが現状です。たしかに「無駄をなくしましょう」とか「自動車を効率的に組み立てましょう」といった話は、宇宙の謎を解き明かそうとする物理や、DNAの構造を細かく分析していく生物などといった分野に比べると、いわゆる「学問」というイメージは薄いかもしれません。しかし私は経営工学にも固有技術はあると思っていますし、それを開発していくことを目指しています。

生産計画の分野においては、最も効率よく結果を得られる方法論――こういう条件の仕事のときには、どういう順番で仕事を進めれば一番効率的か、ということを組み合わせ数学を使って決めて行く方法――は、これまでにかなり突き詰めて考えられてきています。けれど状況変化によって結果にあまり影響がでないようなスケジューリングに関しては、多くの場合、それぞれの企業や現場ごとに工夫して対応している状況です。私は、それをもっと一般的に理論化したい、環境が変わってもそれなりに結果が出せる方法論を体系化したいと思っているんです。要するに、変動に強いルール作りを目指しているわけです。

実はこうした分野は、まだまだ未開拓な部分がとても多いんです。それは逆に言えば、自分で新しいことを開拓して行ける余地がある、ということ。経営工学という分野は、いわばフロンティアなんです。

重要なのは「意味の見つけ方」

どういう目標に向けてどういうシステムを作るか、ということが経営工学の得意分野です。経営工学を学ぶというのは、単純にプログラミングやネットワークの技術を身に付けるだけではなく、それらを使ったシステムの全体像を描く力を身に付けることなのです。そのために重要なのは「意味の見つけ方」。問題点はなにで、それをどう解決すればよいのか。解決のためにはどんな手法が必要なのか。そうしたことを広い視点で見渡し、システムを構築できるようにするのが、経営工学の専門家なのです。

そのためには、理工系の知識や技術能力と社会科学の専門知識の両方が求められます。一般的に製造企業において、理工系学部出身の人たちは技術面の知識や能力はあっても、どのようにそれを使って行くかの方向性を決めることが苦手。反対に社会科学系学部出身の人たちは、社会科学の知識や経営能力があって、全体の方向性を決めることはできても、理系出身者の手を借りなければそれを実施できないわけです。もちろんこれは一般論ですが。私はこれまで自分が学んできたことと経験を生かして、その両方のバランスが取れた人材を育成したいと考えています。本学科では、理系の頭脳と文系の心、その両方を身に付けてほしいと思います。それは社会に出てからも強い武器になるはずですから。

アメリカで生産計画の教科書として使われている『Manufacturing Planning and Control Systems』
アメリカで生産計画の教科書として使われている『Manufacturing Planning and Control Systems』。以前、私が発表した負荷計画についての論文が参照されている。本書はアメリカのAPICSという生産管理の実務者団体の資格試験の標準テキストでもある。経営工学発祥の地であるアメリカで、実務家が資格を取るために勉強する際のテキストに参照されたことは非常に誇らしい

切手コレクションの一部
切手コレクションの一部。2000年にフランスで発行された記念切手で、人工衛星やペニシリン、DNAのらせん構造、レーザー、在庫の管理で脚光を浴びるICタグなど20世紀を代表する科学分野での発明が図案化されている