経済学部 経済学科
的場 昭弘 教授
Matoba Akihiro

研究分野 社会史、社会思想史、マルクス学

出身地/宮崎県
血液型/A型
家族構成/娘三人
趣味/昔の切符集め、旅行
子供の頃の夢/鉄道運転手
尊敬する人/マルクス
愛読書/スピノザ『エチカ』
好きな映画/一連のヌーヴェルヴァーグ作品、フェデリコ・フェリーニ作品
好きな音楽/60年代前半(ビートルズより少し前)のポピュラーミュージック
好きなTV番組/「ローカル鉄道の旅」
好きな著名人/吉永小百合
好きな飲み物/ワイン
好きな国/フランス

経済学部 経済学科 的場 昭弘 教授

40年間研究を続けてきても、
まだまだマルクスに飽きることはありません。

暗記=文法、それを使って会話をするのが大学での学び

私が担当している社会思想史の授業で学ぶのは、経済と思想の関係について。例えば今年の前期で扱ったのはバブルの思想史≠ナした。

バブルというのは近代、すなわち資本主義の始まりと同時に生まれました。最初のバブルは1600年代。オランダでチューリップの球根が投機対象となり値段が高騰した、いわゆるチューリップバブルが起こります。その当時、アムステルダムには、後に近代哲学の父と呼ばれるデカルトや、合理主義哲学者スピノザらがいました。近代的な資本主義の発展ゆえに、中世的な教会の思想を突破できるような近代思想が始まった、といえるわけです。さらに100年ほど経ち、18世紀のフランスではアメリカでの金採掘権をめぐって金融バブルが起こります。それがルソーやモンテスキューの思想が生まれるバックグラウンドになり、ひいてはフランス革命の引き金になっていくのです。

このように、恐慌の歴史をひもときながら、それぞれの時代に生まれた思想について学んでいくと、経済と思想が密接に関係していることが理解できるでしょう。

高校時代までは、単純に年号を暗記するなど、いわば歴史上の一つひとつの事象をバラバラに学ぶため、こうした大局的な見方はあまりしてこなかったと思います。けれど本来、歴史というのは個々の事象が関連しあって大きな出来事につながっていくもの。囲碁や将棋に例えると分かりやすいかもしれませんね。素人はその場の局面ごとにどんな手を打つかで頭がいっぱいになってしまいますが、本当に強い棋士は、ずっと先を見越して、ある局面では負けても全体の流れを見て勝てるようにそれぞれの手を組み立てていく。このように、きちんと歴史を学ぶためには、さまざまな局面での現象と全体としての大きな流れの両方を広い視野で捉えることが大切なのです。

そのためには、もちろん「1789年:フランス革命」というような知識も重要です。細かい年代を覚えるのは文法と同じ。それを使って、会話ができるようにするのが大学での授業といえるかもしれませんね。文法だけができても、実際に会話をしなければ語学を身に付けた意味はないですから。

40年研究していても、まだまだ足りないマルクス

私が40年来の研究対象であるマルクスの『資本論』に出会ったのは中学生の頃。最初は間違って買ってしまったその本を、高校受験に失敗して悶々としている時期に読み始めて、ハマってしまったんです。そこで高校時代からフランス語を勉強し、『ダイヤモンド』とか『エコノミスト』などの経済関係の雑誌を買ってきて読んだりしていましたね。もちろん全てを理解できるはずもなく、かなり背伸びをしていたわけです。それでも大学へ入る頃には、もういっぱしのマルクス通でした。大学受験の目標も「大学へ入ること」ではなく、「入ってマルクスを研究すること」でしたから。

それからずっとマルクスを学び続けていますが、やめようという気持ちには一度もなりませんでしたね。特に私はちょっと特殊で、マルクスの思想だけでなく彼自身を研究しているので、いってみればマルクス・マニアなんですよ(笑)。彼自身が面白くて好きなので、マルクスに因んだ場所はほとんど訪れていますし、いわゆるアイドルの追っかけのようなもの。だから私の場合は研究=趣味なんです。趣味がそのまま仕事に活かせた、幸運な人間だと思っています。

40年研究を続けているので、それこそマルクスの書き残したものは一字一句が体に入り込んで、自分の一部になっています。それでも一人の人間について知り、彼の思想を通して現代社会を見て、さらにそれをどう活かすかということを考えると、40年でもまだまだ足りないですね。『資本論』がいくら分厚いといっても、1年かければ読み切れます。ただ、それが自分のものになるくらい体に染み込むには何十年もかかるし、さらに「読むこと」と「分かること」というのは違う。私だってまだまだ見落としているところはたくさんあるんですよ。

ヘーゲルとザリガニとヒエロニムス

マルクスの面白さの一つは、彼の文章です。もともと新聞記者だった影響で、マルクスの文章にはレトリックが巧く使われている。論理的なようでいて、途中でわざと本筋からずれていって読者の興味を引きつける。ジャーナリスティックな手法を使うんですね。

例えばあることが困難だという説明をする時に、「ヘーゲルとザリガニとヒエロニムス」を持ち出すんです。ヘーゲルはドイツの哲学者で、ヒエロニムスはキリスト教の聖人、ザリガニはザリガニです(笑)。で、それがどういう意味かというか、ヘーゲルは自分の主張を捨てられないし、ザリガニは自分の殻を脱げないし、ヒエロニムスも自分の煩悩から逃げられない。それくらい難しい、ということなんです。そんなことを言われてもさっぱりでしょ(笑)。普通、学者だったらザリガニなんて言葉は出さないんですよ。そこがいかにもジャーナリストなんです。なんでザリガニ?と読者の興味を引くんですよ。本来、こんな比喩は書かなくていいんですけど、筆が滑っている。分かりやすいことだけを書かずに、すとんと一つ落として、それによって印象を強める。そういう唐突さがたくさんあって、面白いんですよ。

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