経済学部 経済学科
佐野 賢治 教授
Sano Kenji

研究分野 民俗学

生年/1950・寅年
出身地/静岡県
血液型/O型
家族構成/妻、子供三人、犬二匹(柴犬)
趣味/若い頃は登山、今は庭いじり
子供の頃の夢/船乗り、海外特派員、とにかく外国へ行きたかった
尊敬する人/篤農家(たとえば有機農業家・山形県の星寛治さん)
愛読書/通勤の往復に新書を必ず一冊読むことを課しているが寝入ることが多い
休日の過ごし方/あまり休めない
好きな映画/「座頭市」、「男はつらいよ」明暗問わずアウトローの世界
好きな音楽/美空ひばり、都はるみ、小林幸子など演歌
好きなTV番組/あまり見る時間なし
好きな著名人/マハトマ・ガンジー
好きな食べ物/豆腐、日本酒の澗
好きな国/中国、インドなど、人が多くバイタリティあふれている国

経済学部 経済学科 佐野 賢治 教授

民俗学はカミソリではなく、斧。
大きな問題を切ることができるのが民俗学です。

民俗学は「知恵」を扱う学問

「民俗学」という分野は、大学で学ぶ諸君にとっては、あまり馴染みのないものかもしれません。民具、民芸、民謡、民話、民家、民俗芸能というような民≠ェつく言葉がありますね。それらは近代化のなかで人々の暮らしから失われてしまった伝統的なもの。そういう民≠発見し、再評価していこうという動きから生まれたのが民俗学です。

普段、私たちが学校で学ぶ「知」は「知識」の知ですが、民俗学の「知」は「知恵」の知です。現代社会は、この「知」のバランスがとても悪い状態だと言えるでしょう。例えば民法に基づいて遺産相続を考える時、人権は認められていても人格はあまり問題にされません。ところが昔だったら、今でいうところの生前贈与にあたる「隠居制度」など、生活の知恵から生まれた慣行が機能していました。理論として民法の体系はしっかりしていても、生活レベルではしっくりこないことも多いです。現代社会では、細分化された知識よりもむしろ、経験的な生活の知恵、生きていく力のようなものが大切になってきているのではないでしょうか。どちらの「知」が優れているかではなく、そのバランスが大切。バランスが取れていれば、本当の意味で幸せな生活が送れるのです。ですから、生活の「知恵」という部分にもっと目を注ぐ必要があるように思います。

また、民俗学は自分の文化を知る学問です。全身を見るためには自身の背中も見なければならないわけです。背中を見るためには、鏡など外からの眼、比較が必要です。すなわち異文化との比較です。異文化を知ることは自文化との違いを知ること。最終的には己を知ることに繋がるのです。それが比較民俗研究の立場であり、このようにして文化の多様性を知り、自分と違うからこそ相手を尊重し、理解しようとする姿勢は、グローバル化した現代社会に生きる我々にとって重要な「知」なのです。

現代人は半分の人生しか生きていない

民俗学では祖先崇拝や死後の世界観など、死後の世界のことも大きく扱います。天寿を全うして死を迎え、やがて先祖になり子孫に祀られると考えていました。民俗社会の人々はご先祖様になることをとても大事に考えていました。それはおめでたいことであり、生きる励みでもあったのです。そう考えると、人生を生まれてから死までとして捉えている現代人は、昔の人に比べて半分の人生しか生きていないことになると言えるかもしれません。しかも死後の世界がイメージできないため、生きることまで辛くなってしまう。皆が同じような死後の世界観を持って死を恐れずに暮らしていた頃と、死後の世界がイメージできずに死を恐れながらの暮らしと、どちらが幸せだろうと、ふと考えることもあります。

民俗学は斧に例えられるでしょう。例えば、社会学は現代社会の諸問題にカミソリ、ナイフのように鋭く切り込みます。民俗学は切れ味は悪いですが、大木を切ることができる斧といえます。庭木を見栄え良く剪定するにはナイフで間に合いますが、大きな木を切るためにはどうしても斧がいります。このように民俗学は、我々が抱えている大きな問題を考えるときに必要な学問であり、役に立つものなのです。

神奈川大学は、民俗学に関しては国内でもかなり高いレベルの教育が受けられるところです。学部こそないものの大学院に歴史民俗資料学研究科が設置され、先生の数と研究分野の幅広さは、国内でもトップレベルだと思います。横浜キャンパスにある「日本常民文化研究所」には、民俗学関連の資料や図書も多く所蔵されています。民俗学に関心のある諸君はぜひ足を運んでみてください。

『西南中国 納西族(ナシ族) 彝族(イ族)の民俗文化』(勉誠出版)
漢族と周辺諸民族の民俗宗教の比較研究として行われたフィールドワークをまとめた『西南中国 納西族(ナシ族) 彝族(イ族)の民俗文化』(勉誠出版)

お土産にもらった彝族の人が使う酒器
フィールドワークの際に、お土産にもらった彝族の人が使う酒器。彼らはお酒好きな一族で30度以上の強い酒を好んで飲む。大きなカメに長いストローを入れて一緒に飲むのが礼儀