ビジネスシーンだけでない社会に貢献するマーケティング思想
「マーケティング」という言葉は今日では一般にも浸透していて、皆さんも耳にしたことがあると思いますが、この概念が形成されたのは20世紀初頭のこと。経済学の歴史が300年と言われるなかで、マーケティングの歴史はまだ100年くらいです。
マーケティングは一般的には企業による市場創造活動と言われ「顧客(消費者)のニーズを知り、製品化してプロモーションし、流通・販売を行うという一連の活動」として知られています。その中心となるものが「顧客志向」ということですが、私はそれをもっと広い意味でとらえています。私がマーケティングの勉強を始めてずっと後になって、“The sprits of ‘you’ attitude”という言葉に出会いました。これを私は「相手志向の態度の精神」と訳していて、マーケティングの神髄はここにあると考えています。そしてそれは、ビジネスシーンに限らずもっとさまざまなシーンで応用できると思うのです。現に最近では、大学や病院、そして社会問題のマーケティングなど、さまざまなジャンルでマーケティングが取り入れられ始めています。相手志向の態度の精神、このマーケティングの思想・哲学は、社会全般に対して大きな貢献ができるはずです。
私の専門分野はマーケティング理論・研究史です。講義ではマーケティング概念の意味と歴史、マーケティング・マネージメントの理論的枠組み、マーケティング思想の意義など、マーケティングについて一通りの知識が得られるように心がけて進めています。
また、自身の研究テーマとして取り組んでいるのは、マーケティング研究の「学」としての確立です。マーケティングはこれまで経済学や経営学の一分野として扱われてきましたが、「マーケティング学」という固有の論理と方法を有する学問分野であると私はとらえています。
ドライではなく湿り気のある人間であれ
学生たちに望むことは、どんな状況下でも強く、アイデンティティを持って自らの意志を貫く人間になってほしいということです。けれども、独りよがりの人間はいただけません。世の中はなんでもかんでもデジタル社会ですが、人間としてはデジタルではなくアナログ的な人間であってほしいとも思います。ドライではなく、他人や社会のことを考えられる“湿り気”のある人間という表現がしっくりくるでしょうか。
また、いつも社会全体の動きを見据えるようであってほしいと願っています。社会があって自分があるということを忘れないでください。

元来凝り性で一つのことをとことん極める性格。さまざまな趣味を極めて“卒業”してきたが、現在の趣味は、約20年間続いたハイファイ・オーディオの後をうけての高級時計の収集。時計界のピカソと呼ばれるジェラルド・ジェンタのデザインに魅せられて集め始めた。服装や指輪などとのコーディネイトを楽しんでいる

著書『マーケティング学の生誕へ向けて』(同文舘、2003年)。学位論文をまとめたもの。マーケティング学の次なる書物の企画も考案中。50代半ばを過ぎ、残りの人生、趣味を楽しむだけでなく、マーケティングの研究の分野でももう一花咲かせたい




